暗夜の灯

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「いっ、たたたっ」  太腿の筋肉があげる悲鳴が、思わず私の声となる。翌日にはしっかりと、運動不足の代償を負う事になった。  円陣バレーだけで、筋肉痛とか……  あまりに情けない身体に、悲しくなってきた。  家にいても落ち込むだけ。  こんな時、私は決まって近所の河川敷へ行く。  堤防に座って川の流れを見ていると、気持ちが落ち着いてくるから。  とはいえ、軋む身体に鞭打ちながらくるのは、かえって逆効果だったかな。  ここの河川敷は綺麗に整備されているんだけど、意外に人が少ない。休日の昼間だと賑わっているけど、平日のこの時間はこの空間を独り占めできる。  もう日が落ちかけてオレンジに染まる空の下。ゆっくりと川の水が、反射しながら流れていくのを見るのが好き。思わずその景色に見惚れていたら、私の特等席に猫が二匹いた。白い猫と黒い猫。しばらく見ていたかと思ったら、白猫が先導して走り去っていった。 「行っちゃった」  猫が去った瞬間、現実に引き戻された。可愛かったな、あの猫たち。  走り去った二匹の余韻に浸りながら、私は堤防にしゃがみ込んだ。  小さい頃から、見慣れた景色。  だからこそ落ち着くし、大好きな景色。  膝を抱えて浸っていたら、堤防の下の芝生で誰かが動いているのが見えた。  ……ボールを蹴ってる?  多分、一人で練習しているんだろう。  リフティングしたり、左右の足を使い分けながらドリブルしたり。  っとに。避けているのに、どうして目にしてしまうんだろう。  でもこの人、上手だな。  ちゃんとコントロールされて体の軸がブレてない。  すごい……幾つくらいの人なんだろう。  気づけば立ち上がり、堤防の下まで降りていた。  少しずつハッキリしていく姿…… 「日高くん?」  そこにいたのは、紛れもなくクラスメイトの日高くんだった。
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