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「よく、ここで練習してるの?」
何となく、堤防に並んで座り込んだ。
「いや。たまたまだよ。今日は部活が休みだったから。身体を動かさないと落ち着かないんだよ」
横を向きながら、日高くんが答えてくれる。
続かない会話がなんだか照れくさい。
何でこんな展開になったんだ?
別に挨拶してそのまま別れてもよかったのに。
でも何だか、あの目があった時に『話したい』って思ったんだ。とはいえ、話す事って……
「さっきね。ここに二匹の猫がいたんだ」
ふと、さっき見た景色について話したくなった。
私の唐突な話を、日高くんは黙って聞いてくれる。
「時間にしたらほんの少しだった。だけど夕焼けの中、並んだ二匹と伸びる影を見ていたら、何だかすごく幻想的で綺麗だったの」
走り去った後も余韻に浸るくらい。現実離れした景色に見えた。
「その後だった。ボールを追いかけている日高くんに気づいたの」
ずっとボールだけを見て、追いかけていた。
「最初は日高くんだって気づかなかった。ただ、すごく上手な人だなって。そしたらもっと近くで見たくなって。それで……」
ここまで話して、急に恥ずかしくなった。
何言ってるの?私。
こんなの「見惚れてました」って言ってるようなものじゃない。
夢中で話し続けていたけど、言葉が続かなくなって、思わず俯いてしまう。
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