第4話 その術式の開始

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 いずれにしても、途中までは正しくひとりかくれんぼを実行しなければならない。  モニタに2つの画面が浮かぶ。Batrazに紐付けられたアカウントで智樹が担当するDzus(スーズ)と奈美子が担当するqara(カラ)の画面だ。タブレットに軽く手を振り、2つの画面からも同様の反応があることを確認する。Batraz、Dzusとqaraの音声は自動的に変性される。 「始めるぞ」  丁度午前三時にあわせ、オープニングの曲をかけ、モニタには簡単なタイトルがポップアップする。そこに炎の形のアバターが現れる。 「こんばんは。Batrazの不定期配信にようこそ。頂いた投げ銭は、超常現象の検証にありがたく使わせて頂きます」  さっそくいくつかのコメントと多少の投げ銭が確認された。 「さて。今回はおなじみ、Sasrykvaからの挑戦を検証することにしましょう。ここにいる皆さんは、いずれもSasrykvaの動画をご覧になられたと思います」  画面にたくさんの拍手が流れる。いつものことだが、Sasrykvaの動画を見た人間にはこのリンクが現れるよう、環は細工をしている。 「まずはひとりかくれんぼを始めます。今回もサブモニタに表示されるDzusとqaraにお手伝い頂きます。Sasrykvaは常に1人。だから本当に友達がプレイしているかはわかりませんでした」  完全な自作自演の示唆、それは誰もが思っている疑問だ。  モニタでは2人が画面の前に神津之介のぬいぐるみを出し、名前をつけて呼びかけてカッターで刺し、呪文を唱えて風呂に沈める。そして立ち去り、クローゼットの中に隠れた。 「居住地の特定を避けるため、現在Dzusは市内のウィークリーマンション、qaraは市内のビジネスホテルに滞在しています」  早速その内装からそれぞれの建物の場所と名称は特定されたが、カーテンを閉めているから部屋の特定には至らないはずだ。  環は注意深く、その視聴者の名前の追加状況を確認した。  そしてその中に1つのユーザー名を見つけた。
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