第5話 その解呪

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 環は神津之介から引きずり出した部品を大写しにし、そしてその線が神津之介のぬいぐるみの内部に繋がっていること、ぬいぐるみをめくることで、その四肢にその先端が伸びていることを映す。そして傍らからコントローラを取り出す。  再び神津之介のぬいぐるみを床に置いてタブレットの前に置いたコントローラを動かせば、神津之介がくるくると回った。 「今回は少しお金をかけました。モニタの波打ちは動画のエフェクトです。神津之介はラジコンで、神津大学の工学部の知り合いに協力を頂きました」  トーク欄では賛否両論だ。つまり環はSasrykvaの創出した現象が再現可能に見せた。 「Sasrykvaからの通話申請のリクエストが来ていますので、許可します」  そう告げると、環のモニタの中に通話の申請がなされ、環は許可した。 『あはは、バレちゃった』 「ということは、今回はこのネタバラシで正解でよろしいでしょうか、Sasrykva」 『ああ。使った中身はちょっと違うけどね、大体は同じようなものだ。バレてしまっては仕方がない。あの動画は後ほど削除しよう』  Sasrykvaは動画が欺瞞であることを宣言した。よってこの噂は追って収束するだろう。 『次も頑張って当ててくれよ、Batraz』  そうして唐突に通話は切れた。 「ご視聴ありがとうございます。以上の顛末ですので、これで配信を終了します。本動画は1ヶ月後に削除予定です。それまで、投げ銭をお待ちしております」  そうして環は配信を終了した。  そして同時に、神津之介は全ての力を失ったように、床に崩れ落ちた。 「智樹、奈美子、お疲れ様」 「もう撤収していいの?」 「わ、私は一晩泊まってから帰ります! ビジホなんて初めてなので!」 「ああ、好きにするといい」  環は奈美子が、親に友達の家に泊まることにすると報告していたことを思い出す。  後は全てを無に帰すだけだ。純粋に、Sasrykvaの呪術を呪術で打ち消す。  Sasrykvaは愉快犯だ。Sasrykvaが集めた全ての神津之介。それがいったい何か。それが問題だ。  神津之介自体はこの神津市のマスコットキャラで、この神津一体に知れ渡り、認知度がある。呪いというのは丑の刻参りしかり、広く知られていればいるほど強力だ。 「果たしてそれは、何をもたらすのかね」
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