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ひとりかくれんぼ。
ぬいぐるみに名前をつけ、詰め物を全て出して代わりに米と自身の爪を入れて縫い合わせる。余った糸はぬいぐるみに巻きつけて結ぶ。隠れ場所を決めて、そこに塩水を用意する。
午前3時になったら、ぬいぐるみに対して「最初の鬼は(自分の名前)だから」と3回言い、水を張った風呂桶にぬいぐるみを入れる。家中の照明を全て消して砂嵐のテレビだけつけ、目を瞑って10秒数える。
刃物を持って風呂場に行き、「(ぬいぐるみの名前)見つけた」と言ってぬいぐるみを刺す。
「次は(ぬいぐるみの名前)が鬼」と3回言い、塩水のある隠れ場所に隠れる。
終わらせる時は、塩水を少し口に含んでから出、ぬいぐるみを探して、コップの残りの塩水、口に含んだ塩水の順にかけ、「私の勝ち」と3回宣言して終了となる
環はこれが一般的な手順であったはずだと思い起こす。
比較的最近、インターネットという不可視な位相から生じたこの呪いは、仮想と現実の間にいつしかさまざまな怪異を生じさせ、そして恐ろしい勢いで伝播されていった。ようは都市伝説というものだ。
それならば殺意を持った神津之介の霊に付き纏われてもおかしくはないだろう。
二頭身の? という疑問はやはり、心の奥にしまった。
そうすると、環の思考の向かう先は単純だ。
果たしてこれは、金になるのか否か。
環はそう考え直した。直接お祓いで金がとれなかったとしても、そして少しだけ時流には遅れたとしても、これは話題の都市伝説である。換金価値はそれなりに高い。環が本業だと思い、親しい周りからは副業だと思われている季刊『異界』をはじめとしたオカルト誌へ寄稿すれば、小金になるのかもしれない。
「それにしてもなんで神津之介なんて使ったんだよ」
「可愛いから怖くないと思ったんだって」
環の脳裏には神津之介が闇夜にナイフを持って部屋を彷徨きまわる姿や神津之介の霊に取り憑かれた姿を思い浮かべたが、確かにそれは客観的には恐ろしそうには思えない、と考えた。
「けれどもこと、この神津でそれをやるのは最悪だ」
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