第2話 そのまじない

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 環は懐から呪符を出す。ルーン文字をベースとした環オリジナルのアイテムで、デザイン性を重視したものだ。ガチで作ったデザイン性を度外視した呪符は環自身が身につけているが、サエコに示したコンビニでカラーコピーした小銭稼ぎ用のものでもそれなりの効果はある。転写シートVerを作ったりと小銭稼ぎをしている。 「これは魔除けのお守りで、悪いことを遠ざける」 「え、綺麗。でも、おいくらくらい……?」 「あ、俺が払っとくからいいよ。大した金額じゃないから」 「おい智樹。俺も女子高生で儲けようとは思ってないぞ」  実売価格は500円から3万円。相手の顔と身なりを見て決めている。 「それから万一のためにLIMEを交換しておこう。何もなく1ヶ月経過すれば、削除するから」 「ってことだから平気。環はいい人だから大丈夫だよ」  サエコとエリが頭を下げて立ち去れば、智樹は机を離して環の前に座り直した。 「いい人、ね」  環はそれとなく智樹を睨みつけたが、智樹は気にするそぶりすら見せず、にこにこと微笑んだ。 「マジ凄い。神津之介の霊が消えたよ。呪符のせい?」 「それは俺が聞きたい。霊が消えたのはいつだ」 「え」  智樹は首を傾げ、宙を見上げる。環には何かがいたであろうことくらいは把握できるが、幽霊は見えない。 「そういえば、それより前に数は減ってた気がする」  数、というのが気になったが、環は無視することにした。女子高生と不必要に関わりたくないのだ。 「やっぱりな。つまりそれは厳密には神津之介の霊じゃないんだよ」 「どういうことさ?」 「ひとりかくれんぼっていうのは妙なシステムなんだ。オープンソースっていうかな」 「オープンソース? 俺にわからない話なら別に説明しなくてもいいけど、解決したし。ありがとうね」  環の説明在は呪術の類がわからない智樹にとっては理解しがたいものであり、基本的には細かいことは考えない智樹は問題が解決すればそれでよかった。  だから環の続く言葉は予想外だった。 「タダ働きにしてやるから手伝え」 「え? もう幽霊いなくなったよ」 「ああ。サエコは大丈夫だろ。問題は他にあって、つまり変な呪いなんだよ、このひとりかくれんぼってやつは」
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