第2話「俺にとってのフツーの家事情」

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「しかし、照貴よ。いつまでもアルバイトってのはワシは心配じゃよ」 「へーき。 あの地獄の安月給でサンドバッグにされる日々に比べれば、今のコンビニは天国だよ」 介護施設なんかよりもコンビニバイトのが稼げる。 特に、人手の足りないコンビニは。 ブラックを通り越して漆黒なシフト。 俺は週6〜7日で朝から深夜まで入れられてる。 「シャワー浴びてくる」 e1a7bae2-a895-4b38-8bf5-a3baf6bce634 刑務所並みの速さで全身洗ってシャワーから出てくると俺はパンツ1丁で座布団に座り、ローテーブルの横においてある紙コップの束から1つ取り出してそれに大容量の焼酎をなみなみと注いでぐっと呑み干した。 「あー、うまい」 「体を悪くするぞ照貴。せめてシャツは着なさい」 「じいちゃんみたいなやつ?昭和だなぁ」 じいちゃんに言われて俺は仕方なく黒のTシャツを着て酒を飲み直す。 やけ酒だ。 5e766ff7-ad2c-4952-9d1b-4606b8344952 しかしこのじいちゃん幽霊、半袖の肌着に赤い腹巻き、紺色のズボンと長い白靴下を履いている。ほんと昭和。 もちろん幽霊らしく頭には白い三角布をしている。 「これはあったかいんじゃぞ。 それにな、ワシの生きてた頃はもっと地球は寒く、こんな贅沢なエアコンなんてなかったんじゃ」 じいちゃんはエアコンの位置まで浮かび上がるとポンポンとエアコンを叩く。 「温暖化だからね。 ふぁ〜…眠っ…」 座布団を枕に俺は眠さに負けて寝ることにした。 「こりゃ照貴。弁当は食わんのか? 酒だけだと胃に悪いぞ」 「いい…後で食うから…起こして…」 俺の意識はそこで途絶えた。 たぶん、数時間にはじいちゃんが起こしてくれる。 生きてればだけど。
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