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第2話「俺にとってのフツーの家事情」
ガチャ
鍵を回し、俺は家に入る。
「おっ、今日も午前様だな照貴」
「まぁね。
また柳瀬の馬鹿が来ないからこんな時間だよ」
ちなみに今話している相手は…なんと、この部屋に縛られてる年寄りの幽霊だ。
地縛霊ってやつ。
俺は昔から幽霊が視えるし、会話も出来る。
その気になれば除霊とか成仏させることも可能だ。
でもいちいち全部相手するのは面倒だし、害はないからほっといてる。
「はぁ。なんでソイツはクビにならんのじゃろ。
ワシだったら遅刻3日でクビにするわぃ」
そう言いながらあぐらをかいて腕組みして空中浮遊しながらついてくるこの幽霊、じいちゃんはプンプン怒っている。
ちなみに俺とは血の繋がりはない。
俺は物心ついた時には身内が誰もいなく、施設で育った。
施設ではなるべく目立たないように暮らし、高校を卒業と同時に無一文で施設を追い出されて寮付きの介護施設に就職した。
就職した、のはいいんだが。
そこの先輩・同僚がクソだった。
給料を払う人から怒られたり注意されるのは構わない。
だがどこの世の中もそうだが、先輩・上司というだけで行き過ぎたパワハラに限りなく近い叱責や失敗のなすり付け、いじめがある。日常的に。
介護施設なんてのは俺が就職した所だけかもしれないがひどい場所だった。
地方から集団就職で集められてきたそいつらがやけに仲間意識が高くて厄介だった。
どうやら俺が真面目過ぎたらしく、目立ってしまい目を付けられちまった。
入社初日の代表挨拶で俺はただその言葉を普通にメモに取っていただけなのに、他のやつは取っていなかったらしく、代表がそれを注意してからやつらの嫌がらせが始まった。
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