第12話「初めて女性とお付き合い」

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「あら、テルちゃん おかえり。 随分 いっぱい買い物をしてきたのね。 それ全部 食材?」 (うわ… 萩野さんだ) なんでこう間の悪い時に会っちゃうんだろう。 「ええ…まあ」 「そんなにいっぱい 一気に食べられないでしょう? よかったら私がもらってあげるわよ」 「結構です!」 俺は萩野さんの横をダッシュで駆け抜けようとしたが、萩野さんに買い物袋を掴まれる。 「あら〜牛肉なんて入ってるわ! もう、国産角切りだなんて贅沢 ね! この牛肉さん、私に食べてほしいって言ってるわ〜」 カレー用にちょっと奮発した国産和牛の角切り。 それを抜き取ろうとした 萩野さんの手から急いで奪い返す。 「やめてくださいよ!」 「ケチね〜。 私なんて生活保護だからこんな高級なお肉なんて食べられないのよ? 今までたくさんおすそ分けしてきたじゃない。 恩を忘れたの? あの女が来てからずいぶん私に冷たくなったわね」 あの女 呼ばわりされて俺はさすがにカチンときた。 「萩野さんと違って全然 控えめですし、それに 彼女はガリガリに痩せてるんですよ。 じゃあ、俺もう行きますから!」 俺は今度こそ 萩野さんを振り切ろうとするが、今度は腕を掴まれた。 「ならせめて 軍資金だけでも貸してよ。 今から稼ぎに行くからさ〜」 もう 萩野さんのパチンコ代なんて出したくない。 それにもう萩野さんと喋りたくもない。 萩野さんの手を振り払い、俺は今度こそ逃げ切って東さんの部屋に向かった。
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