9563

3/7
前へ
/7ページ
次へ
警備員はスーパーまで辿り着く。 折り畳み傘を適当な場所に置いて、晩酌の安酒と総菜を見繕う。 ちょうど、店員が刺身に値引きシールを貼っているところに出くわす。 その隣に立って、警備員はまぐろのパックを眺める。 「雨よ降れ」  警備員は店員が傍らに置いていた台車にそっと紙袋を置く。  客は自分の目当てが割引になるかに夢中で気づかない。  まぐろを諦めた警備員がその場を去ったあとも、店員は値引きシールを順番に貼る。  ひと段落して台車とともにバックヤードに戻ると、紙袋を持って事務所に向かう。  タイムカードを押して着替えもせず、傘も差さず、どしゃぶりの中を往く。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加