カオスな歌姫

　ある年の大晦日。SNSのトレンドワードには「カオス」「HANA」「顔出し」などが並んでいた。すべて、あと2時間で始まるテレビ番組「年末歌合戦」に関連するワードだ。

　――ついに、「HANA」が顔出しかあ。不細工だったらどうしよう。まさに顔が「カオス」なんてね。
　――テレビに出るってことはそれなりにかわいいんでしょ。期待。
　――出たよ、ルッキズム。歌が上手いんだから、かわいいか不細工かはどっちでもいい。でも、どんな顔か気になるから、久しぶりに年末歌合戦リアタイ予定。

　といった具合である。

　「カオス」は今年を代表するヒットソングのひとつだ。タイアップしたドラマが大流行し、つられるように主題歌であるこの曲もヒット。歌詞だけをみれば、今までのJ-POPにあったような、どこかで聞いたようなものだが、裏を返せば、ストレートな恋愛ソング。女子高生を中心に大ウケし、ネット上でも数多く再生された。女子高生だけではない。HANAの歌声、「カオス」の独特な曲調は幅広い世代にも評価された。デビューして間もなかったHANAは一躍人気歌手の座に躍り出た。