5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
佐藤は、真夏の炎天下の中、公園のベンチに座りながら友人の吉森と話していた。いや、友人と呼んでいいのか微妙な距離感ではあるのだが。
というか、さっきから吉森が一方的にずっと話しかけてくるのである。正直言って、非常に面倒くさい。
「んも〜裕太くんってば、全然美夢の話聞いてくれない!ちゃんと人の話は聞かなきゃ、メッ☆だぞ!」
「マジでどうでもいい。あと美夢、お前さっきからずっとうるさい。つーか寄るな。胸を押し付けるな。お互い大学生なんだし、もう少し自重しろ」
「も〜、裕太くんが話聞いてくれてないから、何話してるか忘れちゃったじゃん。えっと、美夢と裕太くんの思い出話だっけ?そうだよね。でさでさ、美夢が学校に遅刻しそうになって、でも担任の鬼センには怒られたくなかったから、食パンくわえてめっちゃ走ってたのよ。そしたらマンガみたいに、曲がり角でぶつかっちゃって〜」
「おい、無視するな」
無駄で長くて、とにかく面倒。そんな会話が延々と続いている。吉森がマシンガントークを始めてから既に3時間が経っていた。出会ったときから喋りだすと止まらない奴ではあったが、より悪化していないだろうか。
しかしそんなことは口にも出せず、佐藤はまたも延々と続けられる吉森の話を、右から左に流していくしかないのだ。
吉森と連絡がつき、こうして話を聞くのも3年ぶりだから、少しくらい付き合ってやってもいいだろう。そう思った過去の自分を殴りたい。夏の日没前特有の白い日射しが、佐藤の両眼を刺している。
「でもそしたら、ぶつかっちゃったのが超イケメンの男子、しかも同じ高校の制服だったの!」
「あー、うん。そうだな」
何回繰り返すんだよ、その話。そろそろキレるぞ。というか、さっきから話すのがはやすぎる。マジで口どうなってんだ。
もはや、佐藤は吉森の話をまともに聞いていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!