果心居士の鬼

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果心居士の鬼

 後輩が変な掛け軸を持ってきた。  果心居士の鬼の絵だと言う。果心居士は様々な幻術を使い織田信長や豊臣秀吉などに使っている。  松永久秀の死んだ奥さんを蘇らせて久秀を恐怖させた話が有名だろうか。  果心居士の話の中に絵を使った術の話もある。絵の中から舟を出したり、金を払わなかったから金を払うまで絵の出来が悪くなるなどの幻術を使ったのを記憶している。  そんな果心居士の絵なのだから鬼が何かするのだろう。絵を書いたのは蘆屋道満の娘だという。  高い霊能力を持っていたが女だったためにその力を家族の仕事の裏方でしか使えなかった。なので力を呪物の制作に使ったらしい。  鬼の絵は道長を殺すために作られた呪物らしい。  私はその絵を貰った。100円で買ったというので1000円払った。  その絵を描いたのは私の同級生だ。設定は私が考えた。この絵はショートフィルムのための小道具として作った。  描いた友人はもういない。なので私は絵に友人の名を書いた。悪さをしないように。  その夜夢に友人が出てきた。名前を書くなと怒っている。今回は消しておくと言うと友人の顔が絵の鬼のようになった。  次の日、私の書いたサインが消えていた。  それからだ夜中に物音がするようになった。あと後輩が腕の右腕の調子が鬼の絵を見てからおかしいという。腕が重く、たまに切られたような痛みや強く引っ張られる痛みがあるというのだ。  私は後輩に絵を買った店を聞いて向かった。地下にあるその店には五右衛門の釜茹でに使われた普段遣いできる小さい方の釜と書かれた物などが売られていた。  安倍晴明の母親の狐で作ったの襟巻きなども売っている。  伝統古物取り扱いと店に書いてあった。変な物が多いが主に扱うのは古い映画のポスターやパンフレットだ。  私は鬼の絵は誰から手に入れたのか聞いた。  何か買えと言われたので、化け狸が使った紫蘇の葉で作ったふりかけを買った。パッケージの狸が可愛い。 「鬼にはね人を食べたがる鬼と人しか食べられない鬼がいる。違いが分かるかい?」 「興味ないし質問の答えじゃない」  私が不機嫌に言うと。 「人しか食べられないなんておかしいだろ?そんな生き物は存在しない。人が好きならまだわかるが。人しか食べられない鬼はね、人が作った呪いなんだよ。呪いだから人しか食べられないんだよ。これで充分だろ。他に面白い話はないよ。絵がどこから来たかは大事じゃないだろう?」  何回か聞いたが、関係ない話しか返って来なかったので私は店を出た。  私は鬼の絵を見ながら店主の言葉を考えていた。  後輩に友人をどう思っているかを聞いた。  別に、そもそもほとんど知らないと返ってきた。久しぶりにあった後輩はかなりやつれた感じがした。今は体中が重いと言っている。  なぜあの絵を持ってきたのか聞いたら、鬼に頼まれたからだと言う。そして後輩は黙ってしまった。  夜中に家に帰る途中、あの絵の鬼が歩いているのを見た気がした。家に帰り絵の確認をすると絵が消えていていくつか名前が書いてあった。その中に後輩の名前があった。  次の日に絵を見ると満面の笑みの鬼が描かれていた。  後輩はいなくなった。  この絵は処分しなければいけないと思ったが、よく考えると近所のお寺や神社にどうこうできると思わない。それに近所の寺は猫が集まるので厄怪な物は渡せない。  色々考えて、後輩と燃えてもらうことにした。部活動で作ったと言ったら納得してくれたのはありがたかった。  火葬の次の日、鬼の絵は私の机にいた。  これは困ったことになったと思った。ふと私は伝統古物取り扱いとうたうあの店を思い出した。あの店主は何処から来たかは大事じゃないと言っていた。  私はしばらく考えてあの店に絵を置いてきた。とりあえず帰ってきてはいない。  
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