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入社したての頃は勝手が分からず、先輩社員に手伝ってもらいながら仕事を覚えていき、社会人三年目に入る今年は新入社員の教育も任されることになっていた。
出世欲がある方ではなかったが、さくらはコツコツと仕事を行い、結果を出してきていた。そのため上司からの評判はよく、教育を任されるに至ったのだ。
(新入社員の人って、確か、今日から出社だったよね……?)
さくらは仕事の準備に一段落付けて時計に目をやる。時刻は間もなく始業時間に差し掛かろうとしていた。
(まさか、初日から遅刻してくる新入社員なんて……。そんな人、本当にいるんだな……)
さくらは頭が重くなるのを感じた。
時計の針が無情にも始業時刻を告げる。
「前田くん、ちょっと……」
さくらがどうしたものかと思案していると、背後から上司が声をかけてきた。
四十代の恰幅の良い体格のこの男性は、スーツ姿が良く似合っている。誰にでも分け隔てなく、仕事の実力だけを見定めるこの上司は少々クセが強いと敬遠されていたのだが、さくらはこの上司の下で働けて良かったと思っていた。
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