第一章 さくらは高嶺の花

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 さくらの問いかけに上司は()(けん)のしわを深くしながら答えてくれる。 「続けていける自信を失った、とのことだ」 「……」  上司から聞いた言葉にさくらは言葉を失った。  まだ始めてもいないことに対して自信が持てないことは当たり前のことなのだ。それなのに、それを言い訳にして仕事をしないで逃げてしまうのはいかがなものなのだろうか。 (最近の子たちって、それが普通なの……?)  さくらには分からなかった。 「そういう訳だ。前田くんはいつものように、業務に取り組んでくれ」 「分かりました」  上司はそれだけ言うと個室を出て行った。残されたさくらは大きなため息を吐き出す。 (今日の予定、狂っちゃったな……)  そう思うと、さくらはまた込み上げてくるため息を我慢出来なかったのだった。
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