6人が本棚に入れています
本棚に追加
波乱の幕開けとなったさくらの、社会人三年目の春のこの日。
昼休憩に入ったさくらのスマートフォンが鳴った。スマートフォンはメッセージアプリの通知を告げる。確認すると、それは高校時代からの友人、池田菜月からのものだった。
『さくら~! お願いがあるんだけど、聞いてくれない?』
そんな短い文章と共に、頭を下げるキャラクターの可愛らしいスタンプが添えられていた。
久しぶりに連絡をしてきたと思ったら、一体どんな要件だろう?
さくらはそう思い、
『何?』
と端的な返信をする。するとすぐに既読マークがつき、ほどなくして菜月から着信が入った。
「なっちゃん?」
『さくらぁ~! 久しぶり~!』
着信に応答したさくらのスマートフォン越しから、元気な菜月の声がした。その声は高校時代から変わっていない。
菜月とは大学進学後から徐々に連絡する頻度が減っていき、社会人になってからはめっきり連絡がなかった。それはさくらの過去が原因でもあり、また、菜月自身の私生活が充実していたのもあり、自然と連絡の頻度は減っていったのである。
そんな菜月からの連絡に、さくらは若干の驚きを感じていた。
「どうしたの? 急に」
『実は……』
最初のコメントを投稿しよう!