第一章 さくらは高嶺の花

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 波乱の幕開けとなったさくらの、社会人三年目の春のこの日。  昼休憩に入ったさくらのスマートフォンが鳴った。スマートフォンはメッセージアプリの通知を告げる。確認すると、それは高校時代からの友人、(いけ)()()(つき)からのものだった。 『さくら~! お願いがあるんだけど、聞いてくれない?』  そんな短い文章と共に、頭を下げるキャラクターの()(わい)らしいスタンプが添えられていた。  久しぶりに連絡をしてきたと思ったら、一体どんな要件だろう?  さくらはそう思い、 『何?』  と端的な返信をする。するとすぐに既読マークがつき、ほどなくして菜月から着信が入った。 「なっちゃん?」 『さくらぁ~! 久しぶり~!』  着信に応答したさくらのスマートフォン越しから、元気な菜月の声がした。その声は高校時代から変わっていない。  菜月とは大学進学後から徐々に連絡する頻度が減っていき、社会人になってからはめっきり連絡がなかった。それはさくらの過去が原因でもあり、また、菜月自身の私生活が充実していたのもあり、自然と連絡の頻度は減っていったのである。  そんな菜月からの連絡に、さくらは若干の驚きを感じていた。 「どうしたの? 急に」 『実は……』
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