第一章 さくらは高嶺の花

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 菜月はちょっと言いにくそうに言葉を濁す。それから意を決したようにこう言った。 『今夜、合コンに付き合って!』 「え?」  予想だにしなかった菜月からのお願いに、さくらは目を白黒とさせた。 『実は、欠員が出ちゃって……。女の子、一人足りないの!』  しかも、菜月の周りの女友達にはほとんど彼氏や旦那がおり、頼める相手が今、さくらしかいないというものだった。 「なっちゃん……」  さくらは少し(あき)れたように菜月を呼ぶ。菜月は本当に困っているようで、 『費用とか、私が出すから! ねっ? お願いだよ~……』  そう言って、今にも泣き出しそうな声で懇願してきた。 (困ったな……)  さくらはどうしたものかと思案する。  別に菜月の願いを(かな)えたくない訳ではない。ただ、問題はその内容なのだ。  さくらは迷った挙げ句、 「なっちゃん、ごめんね? やっぱり、合コンって言うのはちょっと……」  さくらは心苦しくなりながらも断りの言葉を口にする。 『もしかして、さくら、まだ(だい)(すけ)くんのこと……?』 「……」 『もう、あれから何年も()ってるんだし、さくらの傷も癒えたかなって思ったんだけど……』 「ごめんね」 『ううん。こっちこそ、無理なこと言ってごめん』
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