14人が本棚に入れています
本棚に追加
「それは、質問の答えになっていません。我々は、あなたが経営する会社のビジョンを訊いているんです。更生保護施設のNPO法人でもないあなたが、なぜ、受刑者を受け入れようとしているんですか? 目的を教えてください」
少し吊り目の刑務官は苛立っているようだった。真ん中に座る最年長者が、勝木の会社情報が印刷されたプリントの束を丸め、感情を抑えるように、彼の手を叩く。
岡山刑務所は、長期刑の受刑者が入所する施設である。ここに収容されている受刑者の内、三分の一にあたる、200人ほどは、無期懲役刑で入獄している。
勝木は、その無期懲役刑の中でも、仮釈放の可能性がある模範囚に対し、仮釈放後の住居と仕事を提供すると申し出ていた。この2つは、仮釈放の審査が通るための必須条件である。
「うちの会社は、メディアミックスで仕掛けてはいますが、基本的には、スマホ用のアプリを開発するIT企業です。会社方針の一つに、”ワクワクをお届けして、生活の質を上げる”というのがあるんですよ」
最初のコメントを投稿しよう!