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タオル姫
私の名前は さき。
小学2年生
私には もうひとつの 名前が あるの。
その名前は…。
「タオル姫〜〜〜。」
お母さんに呼ばれたら
反応するの。
洗濯機ある洗面所からお母さんが叫んでいる。
「はぁーい。」
私は リビングで返事をした。
「ぼくは〜?」
となりでレゴブロックで 遊んでいる
私の弟 5歳の湊人。
「はいはい。タオル王子〜〜〜。」
洗面所でまた叫ぶお母さん。
「はーい。」
湊人も おおきな声で 返事をして私と一緒に洗面所に向かう。
「ほらほら、
タオルひめとタオルおうじ。
出番ですよ。」
洗濯カゴにいれた 洗ったばかりの
タオルを 2人にわたすお母さん。
「かしこまり〜。」
「ブ、ラジャー。」
敬礼をして、
それぞれ濡れたタオルを
受け取った。
「今日は、晴れているからお外に干すよ。」
「はーい。」
サンダルをはいて、2人は庭にかけだした。
物干し竿にタオルを
かけるには踏み台が必要になる。
用意しておいた踏み台を広げてゆっくりバスタオルを竿にひっかけて洗濯バサミをつけた。
「あらら、今日は天気が良い日。姫もうれしいわ。」
姫になりきって、さきはタオルを干す
お母さんの手伝い
お母さんも横で他の服をハンガーにかけて干していく。
湊人は、庭に飛んできた
蝶々や蛾を 追いかけ回す。
干すことよりもなぜか虫をやっつけている。
しかも持ってきた 濡れたタオルを
戦う剣ように
振り回す。
「タオル王子!!何をしているの?
ダメでしょう、タオルはここに干すの!」
「ぼくは 敵をやっつけてるんだ。
これは 王子の立派な仕事だから!!」
「湊人!! ふざけない。」
お母さんに注意されて
急に現実に戻る。
タオル王子はしゅんと落ち込んで真面目に干し始める。
タオル姫、今度は
バスタオルからフェイスタオルを
干し始めた。
「なんて、気持ちがいいの〜。
おひさまぽかぽかに照らされたタオルはとても喜んでいるわ〜。」
タオル姫、とてもご満悦。
お母さんもお手伝いしてくれて
うれしいようだ。
タオル王子は、
結局お母さんにタオルを干すのを任せて、
肩書きは剥奪された。
洗濯干しよりも
サッカーがしたくなったようだ。
「タオル姫、ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。」
まるでドレスを着ているかのように
スカートの裾をおさえて
お辞儀する。
翌日、
「タオル姫〜。」
いつものように
お母さんはさきに
タオルの干し方をお願いしようと
姫を呼ぼうとした。
「本日、タオル姫は臨時休業でーーす。」
ゲーム画面を見ながら答える。
「タオル王子も閉店ガラガラです。」
テレビで好きなアニメを見ている。
「えーーーー。
姫は臨時休業?!
王子は閉店?!」
お母さんは文句をブツブツ言いながら
1人でもくもくと洗濯物を干し始めた。
お母さんの都合良く、
お手伝いには来ない
タオル姫とタオル王子であった。
「人生、そうそう、うまいようには
できてないよ、お母さん。」
「湊人が言うなぁ!!」
ーおしまいー
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