きっとわかる

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きっとわかる

 十代の頃から公募に出し続けて十五年。僕の小説はかすりもしない。選評をもらったことはあるし、準佳作という後々考えたらそれは一体なんだよ? と考え込んでしまうような賞をもらったこともある。  選評なんてもらったことがない僕は自費出版で本を出しませんか? という誘い文句に乗って百万を超える出版費用を負担し、それを返すために二十代を終えた。  それを三回繰り返して僕はやっと懲りた。自費出版で名をあげるのは無理ゲーに近い。出版社が自費出版書籍のために広報に力を入れる訳もないのだ。  それでも書くのはやめなかった。当時流行りだしていたSNSに短編を載せたりもしていたが、それは現在あるような小説投稿サイトではなかったので拾い上げもない。ただ身近に読んでくれる人がいるのが嬉しかった。  そんな僕が小説投稿サイトに出会ったのは何だったっけな? 確かに仲間に紹介されたSNSに小説の投稿コーナーがあって、そこからだった気がする。  そのコーナーはゲーム主体のSNSから独立して今じゃ完全な小説投稿サイトと化した。僕はもう古株だからそんなことも覚えている。  まぁそこに至るSNSを紹介してくれた人とは後に結婚するんだ。さらにその後に離婚するけど。  はじめて見る小説投稿サイトを見た僕の感情は間違いなく嬉しさが勝っていた。だって小説は無料で読み放題だし、作品の感想を作者にダイレクトに伝えられる。短編が多いから同じ作品を何度も読み返して作者が言いたかったことを深堀りもできる。  何より創作仲間がどんどん増えていくのが嬉しくてたまらなかった。一人で机にかじりついて原稿用紙に向かっていた時代とは全然違う。公募雑誌に目を通して、小説仲間を探すには会費が必要なサークルに入らなきゃならないと知って目を遠くした時代とは違う。  今の時代で言うなら陰キャな僕は公募以外に枝葉を伸ばすことに二の足を踏むタイプだったんだ。  ドキドキしながら小説投稿サイトにはじめての作品をアップする。練習のつもりで書いた3万字のほどの青春小説。誰も読んでくれなくても練習だからと自らを落ち着かせた。  はじめて閲覧数が増えた瞬間はどんな感じだったっけ? また増えないかな? って何回も見返したんじゃなかったっけ?
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