炭坑池の怪魚

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「平くん! 本当に来てくれたんだね!?」 3人の少年達の中の1人が言った。 「お前がDMくれた谷口?」 駅の改札から出て来た、赤い学校指定のジャージを着て、青いリュックを背負ったボサボサ頭の少年が言う。胸には平大地の白字の刺繍があった。 「はいっ! 谷口仁(ひとし)です」 「よろしく仁。俺の事は大地で良いぜ? 同い年に、君なんて言われるキャラじゃない。まあ上にも下にも呼び捨てにされてるが」 「あの、あんまり……。もっと大きかと?」 「え? 何、まさかとは思うけど身長の事? だったら帰るけど?」 大地←143cm。 小6平均身長149cm。 谷口151cm。 「いえ、違います。態度が——。思ったより謙虚で、立派な人だと思いました!」 「まあな」 小さな地方の駅に降り立った大地を出迎えたのは谷口仁だった。 駅の名前は円刃津駅。 谷口は一週間前に、炭坑池に行った子供達の1人だった。 「早速行こうぜ? ちゃちゃっと終わらせる」 大地は谷口に敵討ちを頼まれてやって来たのだ。 大地は小6にして、あらゆる釣り大会を総なめにするその界隈では色々な意味でかなり知られた天才アングラーだったが、ちょっと色々難ありだった……。 所謂、鼻つまみ者の様な存在であった。 今回は謎の怪魚を釣ってくれと頼まれてやって来た。 頼んだのは谷口であった。ダメ元で大地のSNSにDMを送ったら来てくれた。行方不明の友人を見つけられないなら、せめて怪魚を釣り上げて欲しいとの願いからだった。 「取り敢えずこれに乗ってください!」 別の少年が電動自転車を大地に差し出した。権田一(はじめ)だ。 それは、駅の側でレンタルしているレンタルサイクルだった。 「これで、移動します! 僕ら自分の自転車があるので、これで大地は着いて来て下さい!」 谷口が言う。 「これ金は?」 「これくらい、俺達に払わせてくださいっ!」 谷口は大地に顔を寄せ言う。 「おっ、おう……。」 良く分からない谷口の気迫に、大地はなんか気圧される。
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