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5 再会
その家は、閑静な住宅街の中にあった。
「先日連絡させていただいた、城木です」
呼び鈴を押し、インターフォンに向かって名乗る。
「おばあちゃん、お客さんだよー」
たぶん5歳くらい――事故当時の沢田彩子と同じくらいの女の子の声が聞こえた。
玄関が開くと、上品そうな女性が出てきた。高齢ではあるが、元気そうだ。
「こちらの人形ですが……」
あのアンティーク人形を差し出す。できるだけ綺麗にしてきた。
おばあちゃんと呼ばれた女性――沢田彩子は人形を見るなり目を大きく見開いた。涙が零れ落ちていく。そして……。
「おねえちゃん……」
震える声でそう言った。
必要最低限のことだけ告げると、城木はその家を後にする。
せっかくの、六十数年ぶりの再会を、邪魔してはいけない。
よかったな……。
フッと笑い、空を見上げる城木。
あめ あめ ふれ ふれ……。
穏やかな風にのり、歌声が聴こえてきた。
Fin
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