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「そんな場所で、永山はいったい何をしているんだ?」
意識を仕事に戻す。今は、恐喝の容疑がある永山栄二を尾行していた。
奴は表向き興信所を開設しているが、実は仕入れた裏情報を元に人や企業を強請るのが生業だ。今回も、市内の芸能事務所に所属アイドルの過去の恋愛についてある事ないこと含めてまとめた「調査報告書」を送りつけ、雑誌社に売られたくなければ金を出せ、と要求してきたらしい。
すぐに連行しても良かったのだが、被害者の証言しかない状況では惚けられた場合取り調べが長引くし、下手をすれば検挙につながらない。なので、何か別件でもいいので、きな臭いことをやらないか見張っていた。数日それを続けると、ボロを出すヤツが多いのだ。
「さあなぁ? わからんが、こんな所に来たって事は、何か怪しいことをやるつもりじゃないか?」
首を捻りながら丘野が応えた。
「まあ、1人肝試しなんかじゃないことは確かだろうが……」
溜息混じりに言う城木。正直なところ、あんなちんけなヤツの捜査に余計な労力を使うのはもどかしい。
永山が歩いて行った奥の倉庫跡を見る。動きはない。
もう少し近づいてみるかと一歩踏み出した時、急に車のエンジン音が響いた。
息を呑み顔を見合わせる城木と丘野。
「うわぁっ!」
そんな叫び声をあげながら、男が1人走ってくる。間違いない、永山だ。
その後ろから、一台の車が猛スピードで追う。永山を轢き殺そうとしているかのようだ。
永山は慌てており、時折足がもつれて転んでは立ち上がり、と這々の体で逃げている。
車は国産のセダンだが、前のバンパーは頑強に補強されている。まるで、人を轢くために強化されたかのようだ。
体が自然と動いた。城木は走り出し、車に向かって大声を張りあげる。
「警察だっ! やめろっ!」
だが止まらない。今度は城木に突進してくる。
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