1 都市伝説

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 「城木っ!」  丘野の悲痛な声が聞こえてきた。  くっ!  目の前まで来た車を、横へ飛んで避けた。そのまま路面を転がり立ち上がる。  身構えたが、車は向きを変え再び永山に襲いかかっていく。動きの鈍い彼ではとても逃げ切れない。  城木は辺りの路面を見まわした。手頃な大きさの石があった。素早く手にとり振りかぶる。そして、凶獣のように永山を襲おうとする車の後部ウインドウに向けて、思い切り投げつけた。  ドンッ! ミシィッ!  衝撃音が激しく響く。ガラスにひびが入る。運転していた奴は驚いたのだろう、車は大きく蛇行し、古い倉庫の壁面に衝突して止まった。ボンネットの部分が倉庫の壁に突き刺さったかのようだ。  運転席と助手席から、よろよろと男が2人降りてきた。  「こいつらっ!」  逮捕しようと駆け出す城木。それを見て、2人は慌てて逃げ始める。  「お、おい、城木っ!」  呼びかけてくる丘野に「永山を確保してくれ」と言い捨て、2人を追った。  逃げ足が速い。走るのには自信があったが、連中もこのような荒事に慣れているようだ。  しばらく追うと、横浜港へと続く運河に行き着いた。  もう逃げられないぞっ!   追い詰めた城木だが、おとなしく捕まるとは思えない。反撃に備える。  だが、2人は驚くべき行動に出た。躊躇なく運河に飛び込んだのだ。  なんだと?  城木が駆けよると、男達がちょうど息継ぎのためか水面から顔を出す。だがまたすぐに潜っていった。  夜の海。波は穏やかだが暗く、そのうねりのどこに紛れ込んだのか、ここからはわからない。  仕方なく戻ると、パトカーの音が近づいてきた。丘野が連絡したのだろう。
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