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「城木っ!」
丘野の悲痛な声が聞こえてきた。
くっ!
目の前まで来た車を、横へ飛んで避けた。そのまま路面を転がり立ち上がる。
身構えたが、車は向きを変え再び永山に襲いかかっていく。動きの鈍い彼ではとても逃げ切れない。
城木は辺りの路面を見まわした。手頃な大きさの石があった。素早く手にとり振りかぶる。そして、凶獣のように永山を襲おうとする車の後部ウインドウに向けて、思い切り投げつけた。
ドンッ! ミシィッ!
衝撃音が激しく響く。ガラスにひびが入る。運転していた奴は驚いたのだろう、車は大きく蛇行し、古い倉庫の壁面に衝突して止まった。ボンネットの部分が倉庫の壁に突き刺さったかのようだ。
運転席と助手席から、よろよろと男が2人降りてきた。
「こいつらっ!」
逮捕しようと駆け出す城木。それを見て、2人は慌てて逃げ始める。
「お、おい、城木っ!」
呼びかけてくる丘野に「永山を確保してくれ」と言い捨て、2人を追った。
逃げ足が速い。走るのには自信があったが、連中もこのような荒事に慣れているようだ。
しばらく追うと、横浜港へと続く運河に行き着いた。
もう逃げられないぞっ!
追い詰めた城木だが、おとなしく捕まるとは思えない。反撃に備える。
だが、2人は驚くべき行動に出た。躊躇なく運河に飛び込んだのだ。
なんだと?
城木が駆けよると、男達がちょうど息継ぎのためか水面から顔を出す。だがまたすぐに潜っていった。
夜の海。波は穏やかだが暗く、そのうねりのどこに紛れ込んだのか、ここからはわからない。
仕方なく戻ると、パトカーの音が近づいてきた。丘野が連絡したのだろう。
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