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……?!
ビクッとして硬直する城木。そしてゆっくりと辺りを見まわす。
誰もいない……。
頬に水滴が落ちた。
雨……。まさか、雨ふり少女?
あめ あめ ふれ ふれ……。
歌声がまた聴こえる。噂での恐ろしい声ではなく、どこか悲しげだ。
視線を下にも向けてみる。すると、瓦礫に紛れ人形らしき物があった。
これは……?
近づき、拾い上げてみる。
アンティーク人形のようだ。ドレスを着た金髪の少女。しかし、埃に塗れ、ボロボロになっている。
城木は人形の汚れを払い、なるべく綺麗に見えるようドレスを整えてあげた。そして、駅ホーム跡へと歩く。
そこにはまだ屋根も残っていた。そしてホームには、古ぼけているがベンチもある。
荒廃した一帯だけど、ここからは景色がいいんだよな。
ホームに立って見上げると、夜空が大きく広がっていた。下には街の光、その向こうには海も見える。
「ずっと倉庫の中に閉じ込められていたんだろう? これからは、景色を楽しみなよ」
そう言って、人形をベンチに座らせた。姿勢を整え、一番良い方角へと顔を向けてやる。
ふと、人形が微笑んだような気がした。
いや、気のせいだよな……。
肩を竦めると、城木はその場を後にした。
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