2 過去の事故

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 イベントで提供する軽食を調理中、火災が発生してしまう。場所が悪く、倉庫に保管されていた化学薬品にも引火し、大爆発を起こしたのだ。  「酷い事故だな……」  溜息をつく城木。  「うん。犠牲者の中に、地域に住む一般市民も多く含まれていたためにJRっていうか当時の国鉄は糾弾されたし、政府も批判された。マスコミも、この事故に関する話題をたくさん採りあげたから、必要以上にいろんな情報が飛び交ったらしい。被害者達のプライバシーなんかも悲劇のように書きたてられたり……」  いくつかの当時の新聞・雑誌の記事がモニターに映っていた。  城木はそれらを順番に読んでいく。そして、ある家族のことが目にとまった。  古い雑誌の記事だ。  「……沢田さんのお宅は両親と姉妹の4人家族だった。今回の事故で、父の保さん、母の里子さん、姉の真美子さんを失った末っ子の彩子さんは天涯孤独となってしまった。1人だけ倉庫の外で綿菓子を買っていたので助かったのだが、まだ5歳だ。仲の良い姉妹で、大好きな『あめふり』の歌をそろって唄うのが最近の楽しみだったという。そして、なんでも、この日お姉さんが持ってきていたアンティーク人形を、次の誕生日に譲り受けることになっていたらしい。その人形も、お姉さんと一緒に事故に巻き込まれてしまった……」  そんなことが書かれていた。  アンティーク人形……?  「どうしたの?」  城木の顔が深刻な色を帯びたので、三ツ谷が訊く。     「これ……」と城木が記事を示す。  「この人形が、君が拾ったという物だと? そして、雨ふり少女の……」  「い、いや、まさか、そんなことが……。でも、なんかひっかかるな」 「気になるなら、調べてみようか? この彩子さん、当時5歳ならもうすぐ70歳だけど、存命の可能性は十分ある」  あめ あめ ふれ ふれ……。  そんな歌声が、どこかから聴こえてきたような気がした。
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