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4 雨
もはや死んだ駅となった場所を、城木はまた訪れた。線路側からホームへ飛び乗る。
あの人形が、まだ座っていた。
「やあ」と軽く手を上げる。「君は沢田真美子さんの人形……いや、もしかして分身? だとしたら、もし妹さんが存命で居場所がわかったら、会いたいかい?」
月明かりを反射したのか、人形の目が輝いたような気がした。
その時――。
この間崩れた物の向こう側、まだなんとか建っている2棟の倉庫の方から、何かが動く気配が感じられた。
もしかして……?
城木は人形に向き直ると「ちょっと待っててね」と言ってホームを飛び降りる。
見覚えのある2人組……あの時運河に飛び込んで逃げた男達が、何かを探しまわっている。
なるほど、永山が証拠データの入ったカードを落としたって言うのは、本当らしいな。
城木の目が鋭くなる。
製薬会社の不正も事実で、そのカードがあれば捜査も始められる。巨悪を叩くための道は、まだ残っているというわけだ。
奴らにそれを渡してはいけない――。
城木はいったん離れ、丘野にメールを送る。今の状況を説明し、応援を要請したのだ。
「あった、これだ」
男の声が聞こえた。
「よし、戻るぞ」ともう1人が応える。
「ちょっと待った」
城木が立ちふさがった。警察の身分証を提示する。
「おまえら、あの時の泳ぎの得意な2人だな? 俺のこと覚えてるだろう。そいつはおまえ達に渡すわけにはいかない」
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