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次に会ったのは一週間後の金曜日の夜。ごはんを一緒に食べた。相変わらずの距離感。本当に私を好きなのだろうか。
これだけ会いたがるということはそれなりに好きではあると思うが、私は特に彼に会いたいとも会いたくないとも思ったことはなかった。だってまだ彼のことを全然知らない。
ハンバーグ屋さんで、ハンバーグを頬張りながら彼は言った。
「一週間も会えないなんてつらすぎる」
彼を真正面から見つめるとほぼ涙目だった。私の頭の上に疑問符が並ぶ。
「何が」
「会えないのが」
「そんなに会いたい?」
「会いたい」
「へぇー、じゃあそう言ってくれればいいじゃん」
「だから今言った」
確かに。言われたところで毎日は会えない。
「何で会いたいの?」
「会ってないと不安だから」
「何が」
「他の男と会ってないかなとか。疑ってるんじゃないよ?モテるだろうから、いっぱい誘いがあるんだろうなって」
私は決してモテるタイプではない。いたって普通のどこにでもいる会社員。
「誘いとかないよ?私よりあなたの方がモテると思うけど」
「俺はまあ、それなりにだけど」
「私より好きな女の子ができたら、そう言ってくれればいいんだからね?」
彼は急に眉間にしわを寄せて不機嫌になった。
「何でそんなこと言うの?」
「そう思ったから」
「俺は他の誰かじゃなくて、あなたに毎日会いたいんだ」
そう言われれば言われるほど不思議だった。私にどんな魅力があるのだろうか。
「逆にどうやったら毎日俺に会いたいと思ってくれる?俺ってほら、背も高いし、顔も悪くないし、外見はそこそこいい線いってると思う。としたら性格?性格が好みじゃない?もっとこう、がつがつしてる感じがいい?男らしいとか、かわいらしいとか、何かこれが好きって性格ないの?」
彼が大真面目に聞いてくるので、私は大真面目な顔で答えた。
「確かに外見はいいと思う。でも私の好みとは違う。性格は……あれこれ言う前にあなたの性格がわからない、そんなこと聞いてくる時点で性格も好みではないと思うし」
彼はこの世の終わりみたいな顔をした。
「俺って、外見も性格も好みとは違うんだ……」
「え、そんな落ち込まないでよ。今までだって好みじゃない人とたくさん付き合ってるから。外見くらい何ともないって。性格は相性だし」
彼はぱっと顔を上げて目を輝かせ後に、また暗い表情に戻った。
「好みじゃない人とたくさん付き合ってたくさん別れてきたわけだ……」
「まあ、そうとも言う」
私は困ったように笑った。
「どちらにせよ、俺にもチャンスがあるわけだよな?」
「チャンスも何も付き合ってるんだから」
「そうなんだけど、付き合ってる感じがしない」
「確かに……エッチする?」
「いや、だからそうじゃなくてぇ」
彼はいつかみたいに顔を赤らめた。
「したくない?」
「したくはあるんだけど、ものすごく」
苦渋に満ちた表情を浮かべる。そんなに悩まなくてもしたいならすればいいと思う。私たちは子どもでもない。十分に大人だ。少なくとも、一度すれば距離は縮まる。
「しなくても今、俺は毎日会いたいし、したらもっともっと毎日会いたいって思うと思う」
「うん、それでよくない?」
「いや、いいんだけど、もうちょっとがんばる」
何をがんばるんだろうと思いながらも、曖昧に頷いた。そういうことで悩んでる時点でやっぱり私の好みとは違うが、もうどうでもよく思えてきたし、そんなことを言おうものなら、もっと彼を悩ませてしまう気がしたからだ。
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