止むな、降り続けろ

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「俺と付き合ってほしい」  さして私に興味もなさそうな告白だったが、ちょうど付き合っていた恋人とも別れていたので、二つ返事でオーケーした。  目さえ合わなかったし、今までまともに話したこともなかったため、お互いをほとんど何も知らない状態だった。  熱のこもった声でも、緊張した声でもなく、そうめんみたいにつるつるであっさりした喉ごし。何で急に告白してきたんだろうという謎は残るが、あまり気にしていなかった。  たいした理由でなくても気にしない。こちらだって承諾にたいした理由はない。二十代後半になっても未だに結婚願望はないし、彼氏がいないと色々相談できる人間も限られてくるので、ただその程度の気持ちで受け入れただけだった。 「なあ、今日会うのいつぶりだと思う?」 「さあ」  最近、週末も仕事で忙しかったため、日曜日は倒れ込むように寝ている日々が続いた。つまり、彼にはしばらく会っていなかった。 「一ヶ月ぶりだよ」 「へぇー、そんなに会ってなかったんだ」  確かにそれにはちょっと驚いたが、働く大人ならないことではない。連絡もゼロではなかったし、そんなこともあるだろう。 「付き合って三ヶ月でこんなことある?」  今の現状がそうなのだが。 「そういうこともあると思うよ」 「付き合ったばかりだよ?」 「会いたかったの?」 「……それは、まあ」  私は小さくため息をついた。 「じゃあ、会いたいって言ってくれればよかったじゃん」  会いたいと言ってくれればそれくらいの時間は作った。私だって鬼ではない。  部屋の外を見ると、しとしと滲むような雨が降っていた。梅雨だから仕方ない。仕方ないことが世の中にはたくさんある。 「……仕事で忙しいときに申し訳ないと思って」 「後でつべこべ言われるくらいなら、そのときに言ってほしいから」  彼はうなだれて黙り込んだ。つべこべ、っていう単語、生まれて初めて言葉として発した気がするなあ、と私はそんなどうでもいいことを考えていたが、彼は知る由もないだろう。
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