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道真に言われた通り晴明を呼んだ。だが、道真の時と違って身体から何かが抜けるような感覚があった。
『お主ら、特に巫女よ。わしの玉が視えているのか。それにしても怨霊となったのに良う祀られるようになったのー。道真。』
『そうだなぁ。そなた、御巫の術について詳しかっただろう。我は今は詳しくない故説明してやってはくれぬか?』
––––––そう。今は。––––
晴明が説明したことを要約すると、
式神とは名ばかりで、御朱印帳は神を呼ぶための媒体になる物だそう。だから、朱印巫女の別名は、『神を呼ぶ者』という。
普段から神が視えている人もいるが、きちんと媒体を通して呼べば誰にでも視えるようになる、という術だそう。神を可視化するのと、距離があるところから呼ぶことがあったりで、霊力の消費が多いとか。
いろいろな所で祀られている神は、分祀されている社の御朱印をいただくたびに力が増すという。
摂社、末社がある社は、巫女本人が参拝した社に祀られている神を呼べるシステムになっている。
–––なんだ。御巫の家から出て普通に過ごしたかったんだけどな。術を開花させちゃったら家出られないじゃないか。–––
そう。杏佳は家を出て、召喚術がどうのこうの言われずに過ごしたいのだ。
だが杏佳は基本感情を顔に出せないので、みんなは完全無視して、勝手に話をし始めた。
『杏佳よ。巫女であるお主に、玉の名をつけて欲しいのじゃが。』
ここで、不思議に思った方もいるだろう。
晴明の言っていることは矛盾している。もちろん、晴明の話を聞いている六人と一柱もそう思ったわけだ。
「晴明。玉には玉という名前があるだろう。何故また名をつける。」
涼星は以前晴明に会ったことがあるようで、少々辛辣な気もする。ま、本人が気にしてないなら良いけど。
そしていつの間にか涼星、陽緒は戻って来ている。
『玉とは仮の名じゃ。それゆえ巫女に真の名をつけて欲しいのじゃ。』
仮の名前をつけることが出来るのは少し驚くけど、不思議がなくなったから驚くもなにも無さそうだ。
名前ー名前ーう––––ん。
「–––––悠てどう?」
そう杏佳が言った瞬間、元・玉の悠の性別がオスともメスとも言えなかったのが、メスっぽい見た目になった。あと、少し大きくなった気がする。白い柴犬から白いシベリアンハスキーくらいの大きさに。
『さすが。現代らしい良い名じゃな。』
晴明は、杏佳のつけた名前を気に入った。悠も、自分につけてもらった名前を気に入ったようで、愛茉にワサワサしてもらっている。
呑気な楓佳、悠翔が戻って来た時、
「あれれー?何やってんのー?」
と聞かれた。後で全て話すと、二人そろって何?天才?と言われた。
それよりも、
「何故御巫の術について詳しい?御巫の者ではないのに。」
こっちの方が気になったそうだ。杏佳は。晴明も、そんなことを聞かれるとは思っていなかったようで、一瞬だけ驚いた顔をした後、苦々しい表情をした。
『職業柄…な…。』
晴明はこの時、初めて歯切れの悪い返事をしたが、ここまであまり口出ししなかった道真も真意は測りかねるという。
そしてこの謎は、杏佳達の受験が終わった後、伊勢にて解けることとなる。
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