02-05

1/1
前へ
/85ページ
次へ

02-05

「その場所がここ!」  モグラがマウスを滑らせて地図を拡大させた。見覚えのある街の中央に、赤い光が点滅している。 「この街だ!」メグルが叫んだ。 「そう! まさにこの街に魔鬼出没警報が出た。だからおいらはこんなにも警戒してるってわけよ。おいらみたいに裏で管理人に協力している越界者(えっかいしゃ)は、魔鬼に見つかったが最後、八つ裂きにされて地獄界送りにされるからな……」  ぶるぶると身震いしているモグラのとなりで、くるくると前髪を指に絡ませながら、メグルがモニタを見つめる。 「魔鬼はこの街にとどまり、いったい何をしてるんだろう……」 「そりゃあもちろん、自分が作った人間界への侵入口を守っているのさ。新たな越界者(えっかいしゃ)たちを続々と密入界させるべく、この近くに新らしい侵入口、いわゆる『越界門(えっかいもん)』を開いたんだろう」  すると突然、メグルが指をパチンと鳴らした。 「ビンゴ! その『越界門(えっかいもん)』ってやつの場所を聞きたかったんだ!」  モグラが怪訝(けげん)そうな視線を向ける。 「おいおい、何を企んでやがるんだ? お前さんの仕事は越界者(えっかいしゃ)の確保。その後すみやかに地獄界へ投獄。それだけだろうが」 「お前も言ってたじゃないか。ぼくの捕まえた越界者(えっかいしゃ)の数なんて微々たるもんだって。毎月、何百何千と増え続けているって……。だったら元から絶つのが一番さ」 「バカ言ってんじゃないよ! 越界門(えっかいもん)を潰すってことはだな、魔鬼どころか、親玉の『天魔(てんま)』にまで喧嘩を売るってことだぜ? わかってんのかよ!」  大きくうなずくメグルに向かって、モグラはふんっと派手に鼻を鳴らした。 「これだから新人はこまるんだ。奴らの怖さをわかっちゃいない。悪いことは言わねえ、任された仕事以外はするな。お役所仕事ってのは、そういうもん……」 「そうやって前任者たちは腐っていったんだろ?!」  間髪入れずにメグルが言った。 「ぼくだって管理人の仕事なんて面倒臭い。やっと越界者(えっかいしゃ)を捕まえても、どこかの越界門(えっかいもん)から続々と密入界してくる。まったくやりがいのない、ぼくみたいなエリートのやる仕事じゃないよ」 「だったら……」  反論しようとしたモグラを制して、メグルが続ける。 「だったら、やりがいのある仕事にすればいい! 片っ端から越界門(えっかいもん)をぶっ壊して、二度と再び密入界の手引きなんて、ふざけた考えを魔鬼に起こさせないようにするんだ!」  目を輝かせながら(うった)えるメグルに、モグラは、わざと大きなあくびをしてみせた。 「ま、がんばりなぁ……」
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加