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02-05
「その場所がここ!」
モグラがマウスを滑らせて地図を拡大させた。見覚えのある街の中央に、赤い光が点滅している。
「この街だ!」メグルが叫んだ。
「そう! まさにこの街に魔鬼出没警報が出た。だからおいらはこんなにも警戒してるってわけよ。おいらみたいに裏で管理人に協力している越界者は、魔鬼に見つかったが最後、八つ裂きにされて地獄界送りにされるからな……」
ぶるぶると身震いしているモグラのとなりで、くるくると前髪を指に絡ませながら、メグルがモニタを見つめる。
「魔鬼はこの街にとどまり、いったい何をしてるんだろう……」
「そりゃあもちろん、自分が作った人間界への侵入口を守っているのさ。新たな越界者たちを続々と密入界させるべく、この近くに新らしい侵入口、いわゆる『越界門』を開いたんだろう」
すると突然、メグルが指をパチンと鳴らした。
「ビンゴ! その『越界門』ってやつの場所を聞きたかったんだ!」
モグラが怪訝そうな視線を向ける。
「おいおい、何を企んでやがるんだ? お前さんの仕事は越界者の確保。その後すみやかに地獄界へ投獄。それだけだろうが」
「お前も言ってたじゃないか。ぼくの捕まえた越界者の数なんて微々たるもんだって。毎月、何百何千と増え続けているって……。だったら元から絶つのが一番さ」
「バカ言ってんじゃないよ! 越界門を潰すってことはだな、魔鬼どころか、親玉の『天魔』にまで喧嘩を売るってことだぜ? わかってんのかよ!」
大きくうなずくメグルに向かって、モグラはふんっと派手に鼻を鳴らした。
「これだから新人はこまるんだ。奴らの怖さをわかっちゃいない。悪いことは言わねえ、任された仕事以外はするな。お役所仕事ってのは、そういうもん……」
「そうやって前任者たちは腐っていったんだろ?!」
間髪入れずにメグルが言った。
「ぼくだって管理人の仕事なんて面倒臭い。やっと越界者を捕まえても、どこかの越界門から続々と密入界してくる。まったくやりがいのない、ぼくみたいなエリートのやる仕事じゃないよ」
「だったら……」
反論しようとしたモグラを制して、メグルが続ける。
「だったら、やりがいのある仕事にすればいい! 片っ端から越界門をぶっ壊して、二度と再び密入界の手引きなんて、ふざけた考えを魔鬼に起こさせないようにするんだ!」
目を輝かせながら訴えるメグルに、モグラは、わざと大きなあくびをしてみせた。
「ま、がんばりなぁ……」
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