AI(あい)してヘルミーネ

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僕は徳良博士(とくらひろし)。自分で言うのも何だが天才科学者だ。専門はロボット工学。 そんなハイスペックな僕だが、何故か生まれて此の方、恋人ができた事が無い。原因は分からんが、顔が油ギッシュでキモいとか、臭いそうだから近付くなデブとか、何もしてない言ってないのにも拘わらず、女性から一方的に罵倒される。自分ではそんなに不細工とは思わんがね。 そんな訳で彼女居ない歴=年齢だ。因みに二十七歳である。 何、そんな悲観する事はあるまい。ここに僕が持てる知識と技術を惜しみ無く注いだ、ヒューマノイドが完成したのだから。 彼女の名はヘルミーネ。既存のAIを遥かに上回る超AIを搭載した理想の恋人だ。 今、彼女の起動プログラムが終わり、いよいよ夢にまで見た甘い生活が始まるのだ。 「さあ!目覚めろヘルミーネ!僕の恋人よ!」 エンターキーを押す指に余計な力が入る。流石に緊張しているようだ。 しかし彼女は眉ひとつ動かさない。 「ヘルミーネ?そろそろ起きてくんない?」 彼女の目から機械音がする。カメラのピントを合わせている音。漸くお姫様がお目覚めだ。 少しして僕を認識したヘルミーネが上半身を起こす。 人工的に作ったロングの黒髪。人工皮膚は雪のように白い。やや垂れた目。小さく愛らしい唇。 何より力を入れたのが豊満な胸とくびれた腰。そして男を誘うような桃尻。何せ理想を形にしたのだから当然であろう。 「マスター……おは……よう……ござい……ます」 声も美しい。音声ソフトとは比較にならないほど人間に近い音声だ。 「僕は徳良博士だ。ヒロシと呼びなさい」 「はい。ヒロシ様。何なりと御用を仰せ付けください」 「うむ。よろしく頼むヘルミーネ。と、それより何か着せないとだな」 ヘルミーネは全裸である。ヒューマノイドとは言え、グラビア雑誌から飛び出したような我が儘ボディー。免疫の無い僕には刺激が強い。 とりあえず白衣を着せておいた。裸に白衣とはマニアックだろうが、他に着られるような服が無いのだから仕方がない。
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