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さっきとは違い、家が沢山並んでいる。
しばらく歩いていると、俺より少し背が低い女の子が空を見上げていた。
晴れなのに長靴を履いて、ピンクの傘を持っている。
「なぁ、今日は晴れだぞ?」
女の子の不思議な姿が気になり、声をかけてしまった。
「雨が降るのを待ってるの」
「こんなに晴れてるのに?」
「うんっ」
女の子は、真っ直ぐな目で空を見ていた。
確か今日の天界天気予報では、雨は降らないと言っていたはず。
「今日は雨降らないぞ」
「分からないよ?急に降るかもしれないよ?」
女の子は諦める様子がない。
「なんでそこまでして雨を待つんだ?」
「お父さんに、この傘を使ってるところを見せたいの」
「だったら家で見せればいいじゃないか」
「お父さん、空の上にいるから」
「……え」
空の上ということは、天国か。
「ご、ごめん。そうとは知らなかったから……」
「ううん。いいの」
女の子は俺を許してくれた。
親が亡くなった時、女の子はすごく辛かったと思う。
いや、俺が思っている以上かもしれない。
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