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おお、という歓声が上がったように感じたが、実際はパソコンモニターの中から声は聞こえない。たくさんのてるてる坊主が映っているだけだ。
「誰かがこの腐敗した業界に風穴を開けなければいけません。皆さん、今こそ立ち上がる時です!」
画面の中のてるてる坊主たちは立ち上がり拍手を送っている。
感激のあまり、涙を流している者もいる。
東京地区マネージャーのてるてる坊主は右手を突き上げ叫ぶ。
「そして今、この腐りきった会社に天誅を下す!」
もう一度、右手を突き上げ声を張り上げる。
「てるてる坊主が効かないということを知らしめてやろうではないか!」
ここでジッと溜めを作る。
下を向き、肩を震わせている。
暫しの間の後、ゆっくりと決意を込めた視線をカメラに向けると低い声で言う。
「さあ、てるてる坊主信者たちに絶望を味わわせてくれようぞ!」
僕はいつの間にか立ち上がり、拳を突き上げ叫んでいた。
「雨よ、降れ!」と。
了
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