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7 ハンカチ
「ありがとう」
「ううん、大丈夫? 喧嘩?」
「まぁ、ちょっとね」
ありがたく彼女のハンカチを受け取って殴られた頬を冷やした。
ヒンヤリするが、傷もジクジクする事に顔を顰めた。
「救護室で怪我の手当てをしてもらったほうがいいかも」
眉を下げる少女に礼を言おうとして、名前を知らないことに気が付く。
「お礼をしなきゃ。名前は?」
「あ。名前知りませんよね。サーシャです」
「俺は、」
「知ってますよ、先輩有名人ですもん」
「?」
「紳士で、王子様みたいだってすごく人気がある先輩だって。知ってました?」
「いや、初耳だ・・・イテテ 」
大きな緑の瞳に薄い金色の髪の毛は、やっぱり天使みたいだなと思った。
「引き止めちゃってごめんなさい! 早く行って」
彼女が慌てて救護室に向けて俺の背中を押した。
素直にそっちに向かって歩き出すと
「何があったか分かんないけど、早く友達と仲直り出来たら良いね」
そう言って笑顔で手を振っていたので、俺も振り返した。
――背中を押された時に何故か胸が痛かった。
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