87 客間

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 「どういう事なの?」  応接室に入るなり、アデラインが眉を下げて質問してきた。  俺とクリスは、お互いの顔を見て、何処まで話して良いのかわからなくて首を傾げる。  「落ち着いて下さいバーンスタイン侯爵夫人」  クリスがよそ行きの言葉を急に使った。  普段彼はアディの事を義姉さんと呼ぶので、この話し方はビジネスモードだ。  「アデライン、君の言う『どういう事』がどの事を指しているのかが分からないんだ」  クリスに倣うように、俺も口調を丁寧にする事にした。  アデラインは焦りすぎてる。  「ごめんなさい、新聞記事の事よ。何故あれ程騒いでいたのが謝罪文に変わったのかを知りたいのよ。あなた方が何かしたの?」  彼女が知りたい事は、正直我々も正しくは理解できてない――  「新聞社の謝罪文に関しては私達は完全に無関係だよ」  弟が肩をすくめた。  どっちかと言うと情報を漏洩させたのは(クリス)だから確かに嘘じゃないな。  「じゃあ、浮気相手の女性の事は?」  「知り得た情報はあるよ。ただ、本当に男爵家が訴えた事で分かるように、その女性はその家には存在してない」  「嘘よッ、だって・・・」  ボロボロと涙を流すアデライン。  彼女が取り乱す事なんてこないだの侯爵邸で初めて見た位で、3年一緒にいたのに正直この短期間に2回見るなんて信じられなかった。  ああ、やっぱり彼女はステファンを愛してるんだな――  「社長、会長、お客様です」  ノックと共に今度はサーシャ嬢の声がした。  「・・・ 今度は誰だ?」  「それが・・・」  何か廊下が騒がしいんだが?  嫌な予感しかない・・・  「アディ! 見つけたッ!」  何故か俺の第1秘書(チャーリー)を腰にぶら下げたステファン・バーンスタイン侯爵が入口に立っていた。  おい、ここは会社だぞ!?
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