88 半泣き

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88 半泣き

 「スミマセン、お止め出来ませんでした」  秘書(チャーリー)が申し訳無さそうな顔をしたが、相手は侯爵家の当主だ。  流石に彼1人だけでは太刀打ちできなかっただろう。  「いいよ、チャーリー以外の従業員は止めようが無かっただろうから」  クリスが溜息をついた。  眼鏡の温和な――見た目だけだが――第1秘書は我が商会で仕事をしているが、れっきとしただ。此処で将来に備えて俺に付いて勉強を兼ねて秘書をしている。    「ごめん、どうしてもアディに会いたかったんだ」  半泣きになった金髪碧眼の男前が、ソファーに座る妻の足元に跪いたまま振り返った。  ・・・出来れば他所でやって欲しいんだが。  まぁ、乗りかかった船だ仕方ないよな。  遠い目になって窓の外に視線を向ける・・・ 暑そうだな。  心配した従業員達は廊下で遠巻きにこっちを見ているし、額に青筋を立てた社長(クリス)は仁王立ちだし、俺の秘書達2人は呆然となって侯爵夫妻を見ているようだ。  「俺はッ、君を愛してるんだッ」  ああ、やっぱりここでやるのかオマエ・・・ 頭痛がしてきた。  「君が俺のことを嫌いでも、エイダンのことを忘れられなくてもいいんだッ!」  「? 何で俺?」  周りが『しーーーーーッ!』と俺に向かって黙れと言わんばかりに顔の前で手を使ってバツマークを作る。  お前ら、面白がってるだろッ?!  「勃起不全はどうしようもないけどッ!! 閨指導も受けたからッ 今度こそ頑張らせて欲しいッ!!」  その場の全員がキラキラ金髪碧眼のイケメンの告白に大注目してしまったのは仕方ないと思う。  「な、ななな何言ってるのッ 馬鹿あああああぁあ!!」  真っ赤になったアデラインがステファンの口を両手で塞いだが、まぁ、遅かったよな・・・・  全員が凍りついたもんな・・・  
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