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89 吐露
アデラインが折角それ以上恥をかかないように口を塞いだのに、ソレを両手で抑え、引き剥がし更に続けるステファン。
「君が居なけりゃ俺は全然役立たずだッ。侯爵になれたのだってアディを迎えに行ける様に領地の改革を頑張っただけだし! 君がいなかったら怠け者で自堕落な生活して、伯爵位のままとっくの昔に没落してるッ! 俺の生きる希望なんだッ お願いだから帰ってきてッ!!」
・・・なんかステファンが可哀想になってきたぞ。
思わず彼に近寄り、肩を抑える。
「なあ、ステファン? ちゃんと落ち着いて話し合いをしたほうが良くないか? それに此処だと流石に周りにも迷惑だろう?」
俺が周りを見回すと半目になったクリス以外は目を逸らす・・・
「え?」
俺の言葉で正気に戻ったらしいステファンが周りを見回して俺の顔を見て、クリスの顔を見て、アデラインの顔を見て・・・ 固まった。
アデラインは顔を真っ赤にしたままず~っとまるで子供がイヤイヤをする様に頭を振って。
「お願いだから、ステフ。黙っってええぇ・・・」
ひたすら呟いていた・・・・
×××
出来る秘書が周りに集っていた従業員を口止めしながら通常業務へと追い払い、応接室のドアを閉めてやっと静けさが戻ってきた。
「あ~、アデライン、つまりだ。ステファンは結婚後、閨で失敗続きをなんとか挽回しようとして、閨指導のプロに教授して貰ってたんだよ。そこに君が踏み込んだんだ」
もう、いい。
言葉を選んでる場合じゃ無いよな?
俺は腹を括るぞ恨むなよステファン。
「ステファンは君を愛しすぎてそれがプレッシャーになって勃たなくなった。でも本人は何とかしてそれを克服したかったみたいなんだ」
会社だということは目を瞑ろう。
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