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91 鼻水
「どうして急に商会に来たんだ?」
落ち着いたステファンにやっと声を掛ける事ができた。
まぁ落ち着いたと言ってもソファーに座ったアデラインにグスグス鼻を啜りながら抱きついてるだけだが・・・
「電話でマリア嬢が明日になったら、オルコット商会にアディが来るからちゃんと謝れって・・・ 彼女は『一言も子供が出来たなんて言ってないでしょ?』って。言われてみたらその通りで、俺が1人でなんとかしなきゃ、アディとは別れたくないけど、俺の子供だったら責任取らなきゃってそればっかりで頭がいっぱいになって・・・」
グスグス泣きながら、鼻を啜る金髪碧眼のイケメンを全員が何も言えずに見ていたら、アデラインが彼の頭を撫で始めた。
「ごめんね。ステフ。ちゃんと話しを聞かないで」
彼女が夫を見る目が何か変わった気がする。
慈愛に満ちたような目? かな・・・多分だが。
「ステファン、俺もお前の話をちゃんと聞かなかったから同罪だ。すまなかった」
謝るために俺が頭を下げたら
「ううん、俺が話せなかったのが悪いんだ。カッコ悪すぎで恥ずかしかったから。俺、隠してたけど目茶苦茶涙腺が弱いんだよ」
眉を下げて更に情けない顔になるステファン。
「え?」
「泣き出すと喋れなくなるし、一生懸命話そうとすると涙が出るしで、貴族らしくないからってずっと親に言われて育ったんだ。つい押し黙る癖が付いちゃって。でもコレじゃいけないって、斜に構えてカッコつけることを覚えたんだけど・・・ 今度はそのせいで大事な場面で本音が言えなくて、茶化したりふざけた態度で誤魔化す癖がついたんだよ。でも、アディを失うくらいなら泣いてでも詰まっても本音を言わなくちゃって思ってここに来たんだ・・・」
そう言いながら又涙を流すステファン。
「・・・知らなかったわ」
アデラインと俺は茫然とした。
じゃあ、あのマリア・ギタレスはコイツの涙腺が弱いのも押し黙ってしまう癖も格好つけてただけってのも知ってたって事だろうか?
・・・それと今気がついたんだが、彼女はアディが新聞を見て今日ここに来るって事も見抜いてた?
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