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プロローグ ぼくの悪夢
ぼくの悪夢は、いつも、音もにおいもない。肌の感覚もない。
雨特有のにおいとか、濡れた冷たさとか、車の甲高いブレーキ音とか……確かに記憶にはあったはずなのに。
ただ、目の前の友達の、よろけて驚きいっぱいの顔がずっとずっと離れない。
隣の友達の怖い顔も、ずっと、ずっと強く残っている。
そういう「見た」ものだけが――ぼくの夢の中でひたすら繰り返し流れている。
他の感覚についてはどこかあいまいだ。それは夢だからか、ぼくがこうだからか――。
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