いたずら電話かと思ったよ

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 電話の着信音が鳴った。  僕は読みかけの本を閉じた。夜の楽しみといえば僕にとっては読書やテレビくらいのものだった。それを邪魔されたようで、少し不機嫌になる。  棚の上に置いてある時計を見ると、もう二十二時だった。 ――誰だ、こんな時間に。  僕は携帯を手に取って電話に出た。すると電話の奥から女の子の声が聞こえてきた。 「(えい)くん?」  少し高めのかわいらしい声。その声には聞き覚えがある。それに僕の名前を知っているということは僕の知り合いかな。 「あ……」  思わず声を出してしまった。何を話せばいいのだろう。 「あ、栄くん?」  電話の相手の声のトーンが少しだけ高くなる。誰だ、と聞く前に、電話の相手は一方的に告げた。 「明日、公園で待ってるから。約束ね」  そうして電話を切られてしまった。  僕は携帯をしばらく眺める。 「……何だったんだ?」  僕は電話の相手のことを思い出そうとした。うーん、絶対聞いたことのある声のはずなのに、今は思い出せない。一旦集中力が切れると途端に疲れてしまって何も考えられない。  今日はもう寝ようか。  明日になったら何か思い出すかもしれない。  僕はベッドに横になった。しばらくすると、うとうととしてきた。 「えいくん」  あれ、さっきの電話と同じ声だ。少し幼い感じもするけど。 「ね、えいくん」  この子は……。  目覚ましが鳴った。  大人になってから、朝になるのが早くなったような気がする。  いつものように顔を洗って朝食の用意をする。一人で食べる食事というのは何とも味気ないものだ。たまには母さんの作ってくれた、あたたかいご飯が食べたい。  何となく気恥ずかしくて、家を出てからは、ほとんど帰ることがなかったから。  朝食にはご飯と目玉焼きとサラダを食べた。 「ふー、食った食った……」  空になったお皿を見て、昔のことを思い出した。  そういえば、小さい頃はよくおままごとをして遊んでたっけ。  昨日は思い出せなかったが、今ははっきりと思い出せる。  夢に出てきた女の子。僕の幼馴染のスズ。  子供の頃に外国に引っ越してしまった。それきり会えていなかったけど、戻ってきたのかな。  というか何で僕の携帯の番号知ってるんだろ?  母さんにでも聞いたのかな?  時計を見ると、まだ六時半だった。  うん。今からなら、ちょうどいい。僕は服を着替えて、家を出た。
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