第5話/私の不時着→💛

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アノ夢が止まらない! 『なるほどな…、お前の妹、高所恐怖症ではあるが、閉所アンド暗所は大好きっ子な訳か~』 「そう…、それも極度のね…。でさー、これは高校受験を控えてる精神的プレッシャーからかもしれないんだけどさ…、最近はヘンな夢…、それ同じ夢らしいんだけどここ最近頻繁に見るって、けっこう深刻なんだわ」 『どんな夢❓』 「あのね、どっかとても高いところ…、うん、下を見下ろすと雲しか見えないってから、やっぱ、小2ん時に登った山の山頂と被ってるのかも。そんでなのよ…!あの子、決まって、雲をぶち抜く長い梯子を後ろ向きで一段一段降りてるんだって。ガタガタと足震わせて…。夢に出てくるシーンはきまってこのシーンなんだって」 『うわー、その夢、カンペキにヘンだわ。しかも、いつも同じってのも、かなり不思議な現象だよな』 「うん…。夢の中とはいえ、まあ、怖いわよね、高いとこ別にって私らからしてもこえーし!ましてや、キリコは重症度の高所ダメ子ちゃんなんだからさ…」 ツグオのカラダの中にキリコが落っこちてきた日の翌日放課後…。 ミクコはキリコの姉の立場でカレシのツグオへ、”実は…”と、妹の抱える悩みを吐露するのだったが…。 *** 『で、その夢、どういう展開なんだ❓ひょっとして梯子から落ちちゃうとかか…❓その後、わー‼…ああ、夢かって、汗びっしょりで目が覚めるそんなパターンとか…』 「ううん、ただ一段一段梯子を下るだけが繰り返されて、それで終わりらしいのよ。今んとこは、毎回…。ちなみにパジャマ姿でってことよ、いつも。気が付くと朝だってから、そのまま夢から解放されて寝てるってことだろうけどね。本人的には」 いつもはキャハキャハ系な話っぷりが定番のミクコからしたら、やけに神妙な語り口だっただけに、ツグオもどこか親身に耳を傾けていた。 他ならぬ、現役カノジョの妹のシンコク話ってことで! *** 『フーン…。それでさ、けっこうな頻度なの、その夢❓』 「最初は去年の夏あたりで、2,3か月に一回とかそんなもんだったらしい。だから、本人的にもあんま、気にしてなかったみたいなんだけど…。今年の夏休み前からよく見るようになって、先月あたりからは数日おきだって言うから、さすがに親もね…。したら、きっと、受験が近づいてきて、そのストレスからだろうって。まあ、昨日みたいな押し入れタイムも中学入ってしばらくなくなってたんだけどさ。その夢が頻繁になってきたのと並行してさ、しょっちゅうになってきたから。さすがにツグオとエロモードになってる時にアレは驚いたけど…(爆笑)」 『驚いたのはこっちだわ。ハハ…』 この日は、ミクコとツグオも、ここでその話は終わったのだが…! *** その日から約2週間後…。 ミクコとツグオにとって、予期せぬ事態がおこる。 ”はー?ここどこだよ!なんで梯子に乗っかってんだ、オレ…” *** 「えー‼ちょっと、ツグオ、それ、ホントなのー⁉」 『ああ、ホントだわ。パジャマ姿なのもはっきり意識できたし。オレもお前から妹がよく見る夢の話を聞いて、それなりに頭の中にあったから、そのせいだろうから』 「そうだろうね。まあ、たぶん一回だけだよ。ハハハ…」 二人はさして気にしていなかったが…。 その二日後…。 「ちょっとー!ツグオ、雲の中を貫く梯子にパジャマ姿で乗っかってるあの夢、またなの?全く同じ夢だったのね‼」 さすがにミクコは心穏やかとはいかなかった。 一日置いて、例の同じ夢をみたとツグオが告げてきたのだから。 ”さすがに単なる偶然なんてことないでしょ。ふう…” ミクコはいかさか、アタマが混乱していた。 『とにかく、これで終わりかどうかだよ、問題は。お前の妹もその夢、続いてるんだから、この後も続くとなると…』 「そうね。キリコにはまだ黙ってるけど、これで終わりにならなかったら、いろいろ考えないとね」 『ああ…』 そして、二人の不安はあっけなく的中する…。 *** 『参った…。これで3回目だわ。全くおんなじなんだよ、それが。要は眼下に雲がだけが覆ってて、天にまで突き抜けるような梯子を一段一段、ただ漫然と上っていく…。キリコちゃんが見てる夢と一緒ってわけだ…』 「ツグオ、アナタ、梯子下ってるんじゃなくて登ってるの❓それ、間違いない❓」 『ああ、間違いない。最初からなぜか登ってた…』 「ウチの妹は逆よ!いつも、下ってるのよ。だから、厳密には二人同じ夢ってことじゃないのよ!」 『ああ、そうか!キリコちゃんも相変わらずなのか?』 「うん…。昨日も出たらしい。これでここんとこ4日連ちゃんだってから、相当参ってる。しかも、あくまで夢の中の感覚らしいんだけど、そろそろ梯子から足踏み外すとかで落ちそうな感じだって…。そんな恐怖感が日に日に増してるって言ってるのよ。ふう…、親もさあ、担任に話すか、あるいは学校で変な噂広がっても返ってまずいから、その前に専門の医者に観てもらった方がいいかなとか、迷ってるんだ。ああ、だから、ツグオもダメだよ、ゼッタイ!夢の件は誰にも口外したら」 『わかってる。しかしまあ…、オレはともかく、高所NGのキリコちゃんからしたら、マジ、キツいよな…。ここから落っこちるかもって思ってるだけで、夢の中とはいえ、足も震えはハンパないだろうし…』 「ツグオ…、この際、アンタが同じ夢見てるの、妹に伝えた方がいいかな?もしかすると、そんな夢見るの、私だけじゃないって気が楽になるかもだし…」 『どうかな…。彼女と初めて会ってから、1週間もしないうちに、同じ夢だぜ。その後は頻度が増えて繰り返してる…。かえって、なおのこと変だって気にしちゃうんじゃねーか❓』 「そうか~。とにかく、当面、毎朝報告ちょうだい。その夢見たか見ないか。私も妹からはうまく毎日聞き出すからさ」 『おお、了解だ』 で…、その翌日から、キリコとツグオは毎晩、梯子の夢を見ることとなった。 *** ー以下、ミクコとツグオのラインによるやり取りー ≪わかった🙆キリコちゃんへは、お前に任せる❕≫ ≪👌もし、キリコがツグオと直接話したいってことになったら、ヨロシク❕≫ ≪了解~~≫ かくて…。 その夜、ミクコは妹のキリコへ、ツグオも”あの後”、同じような夢を見るようになって、ここ3日間はアンタと同じで連チャン中だと告げるのだった。 自分の恋人があの押し入れ事件❓で初めて会ってほどなく、妹とほぼ同じ夢を見てると告げたことで、姉のミクコはキリコの反応をかなり気遣っていたが…。 幸い、妹は”それ”をプラスに捉えたようで、どちらかというと、幾分気が楽になった様子であったのが、ミクコには嬉しかった。 姉として…。 えっ…、もしかして~❓❓ ”やだ…、また私、梯子下ってる…。わあ、今日は特別雲に吸い込まれそうで、めちゃくちゃコワイ…。助けて…、誰か…” その翌日、キリコとツグオは直でラインの交わし合いをスタートさせた。 あくまで、ミクコを交えたグループラインではなく、敢えて”当時者”二人でのやり取りということで、これは他ならぬミクコが提案したことであった。 更に! そのやり取りは二人だけの共有にして、当面は姉の自分にも話さなくていいからと…。 第1日目⤵ ≪そうか、キリコちゃんも4連チャン目か…😢まあ、4連達成、オレもだけど👍≫ ≪ツグオさん、ワタシ、そろそろ転落する気がするの。とてもコワイ。梯子から落ちて、高校受験も落ちてって…。アタマ、ヘンになりそうだよ~~≫ ≪大丈夫👊オレが守るから‼はは…、そう言ってて、こっちが先に転落とか、それもアリだしね(^_-)-☆≫ ≪ツグオさん、優しんだね😢おねーちゃんが羨まし―❣≫ 第2日目⤵ ≪それ、ホントだよね⁉≫ ≪夕べも確かに登ってた。あとはいつもとまったく一緒。雲もおんなじ❢多分、オレはこのあとも下らないと思うんだ≫ ≪でも私はどうかな…。今晩、私も登っちゃうかも⁉嫌いな高いとこどんどん行っちゃうの、私❓コワイよ~~≫ ≪大丈夫、大丈夫👊オレがそのうち追いつくから❕≫ ≪そうだといいな~。なるべくなら、早めにお願い~~、ツグオさん~💛≫ ≪りょう~かい~~😎≫ 第3日目⤵ ≪ふ~、良かったぜー👍キリコちゃん、やっぱ下ってるんだね❢≫ ≪そう~、登ってなかった。登ってったら、いつまでたってもツグオさんに助けてもらえないもん😢≫ ≪よし!なら、今夜からペース上げて、追いつくぞ!なる早でね(^^)≫ ≪アリガト!待ってる~~💛≫ ≪ああ、キリコちゃんは急がなくていいから。梯子踏み外さないことだけ考えればいいからネ❢≫ ≪アリガト✖100万回ー❢≫ その夜…。 キリコの夢の中! ”やっぱ、今日も下ってる…。ふう、とにかくゆっくり、梯子踏み外さずにだ。ツグオさんの言うとおりに…。ああ~、でも、早く来て~。私をココから救って!ツグオさん…!え…❓えーっ❓もしかして私…、そういうこと❓❓…” ワタシは落ちた~💦 第4日目⤵ ≪なんかー、もうすぐって気がするんだわ。まあ、気のせいかもだが…💦≫ ≪気のせいじゃないよー☆もうすぐ出会えるんだよ、私達~、そんな気がする❢全然するんだもん~❢≫ ≪アハハ…、すっかり元気でてきたね~。ミクコ、中身は聞いてこないが、キミが元気っぽいんで、ホッとしてるよ≫ ≪みたいね~。ツグオさんのおかげじゃい❢≫ ≪👊では、今晩こそは出会えますように~~❢≫ ≪はい~❢梯子の上で待ってる少女より💛≫ その夜。 再び、キリコの夢の中! ”近い!もう近くだって!カレの鼓動が伝わってくるもん。ああ、早く向かえにきて~、白馬に乗っワタシの王子様∼💖” 今夜こそはと胸躍るキリコは、どうしても端折る心に導かれ、いつもより梯子下りは早くなってしまっていた…。 やっぱ、どうしても…。 ”あ!うっそー、なんか、雲の隙間にアタマが見える…。ツグオさん…❓❓” キリコは思い切って下の雲の切れ間に向かって声をかけてることにした。 思えば、この夢の中で声を出すのは初めてである。 果たして、声ってモノが、この空間に出せるものなのか…、伝わりうるものなのか…。 でも、キリコはそれをやってみた。 この際、おっきい声で思いっきりと…! 「ツグオさーん‼」 声は出た。 我ながらえらくおっきい、かわいらしい声だった。 すると…! 『キリコちゃんかー❓なんか、雲の間から、足が見えるんだ‼』 「ツグオさんー‼早く私に…、私にカオ見せて~!早く、迎えに来てえ…」 もうキリコは涙声だった…。 ずッと孤独で、コワくてコワくて、いっそここから飛び降りてしまおうかと、そんな衝動にもかられたりした。 だが、やっと白馬ならぬ白雲をくぐって、マイ王子様が私を助けに向かに来てくれる…! もうすぐ、もう間もなくだ…。 はやる気持ちをもはや押し返せないキリコは、一瞬、下のカレシを覗き込むあまり、バランスを崩してしまった。 彼女は慌てて、カラダの向きを戻したが、時すでに遅し…‼ キリコはバンザイをしながら、梯子から雲の中へ転落してしまった! 「わー‼助けて―、ツグオさん∼‼」 『キリコちゃん―‼』 あわれ、キリコは万歳したパジャマ姿のまま、あっという間に梯子登り中のツグオを超高速で通過…、瞬時でツグオの視界から消えた…。 *** バターン‼ 『痛て~~‼』 「わー‼私、おっこっちゃったんだー、死んじゃったのー⁉」 『ふう…、キリコちゃん、大丈夫かい❓』 「え?ツグオさん…、なの…❓❓」 『ああ、オレだよ、何とか間に合ったみたいだね、はは…』 「!!!」 そうであった~~‼ ”あの瞬間”、ツグオはとっさの判断で、頭からダイブするように落下したツグミを”追って”、自らも梯子から飛び降りたのだ。 アタマから…。 なので! ”途中?で”、ツグオはキリコを追い抜き?、”あの日”落下地点で出会った時のように、気が付くと、すっぽり彼女はカレシ?の中に納まっていたのだ。 ここで夢はぷつんとフィルムが切れるように終焉したのだが…! *** その日の朝…。 ≪信じられん❣❣まったく一緒だよ、キリコちゃん…≫ ≪私もまるで夢のような夢だったんで…。でも、ありがとうね、命がけで私を救ってくれた😢≫ ≪夢の中だけどね(^^)。これで、受験も絶対大丈夫だー≫ ≪感謝✖100万回~~≫❣ かくて…、その夜から二人は梯子の夢はまったく見なくなった。 キリコは姉と両親には、この経緯をすべて話した。 家族は皆一様にキリコの奇異極まる夢からの生還を喜んだ。 他方…、”これって、一体、なんだったのだろうか。何とも不思議な現象だ”と…。 もしや、また再びコレに襲われる日が来ないのかと…、一抹の不安は胸の内に抱えていた。 しかし…、当のキリコだけは”そういった”不安や心配など皆無だった。 むしろ、こんな信じられないような、キセキでトキメキな体験が出来たことに感謝すら覚えていた。 実際、この後、彼女はなんら不可思議な現象など起こらなかったし! そして…、翌年の高校受験も志望校へすんなりと合格! ここにキリコの家族は、完全にわずか残っていた一抹の不安も払拭できたのだった。 めでたし、めでたし…。 と、言いたいところだが…! 姉のミクコだけには、本人の全く意識していないところで暗雲が迫っていた。 *** ≪ツグオさん、受験祝いにアレ、そろそろくれるでしょ❓≫ ≪じゃあ、オレも腹を括る。で、どこで…❓≫ ≪決まってるじゃん!アナタと私にはアソコしかないわ、2回の転落で、私を受け止めてくれたウチのあの押し入れの中よ💖≫ ≪でも、ねーさんに見つかったり、気づかれるリスクあるだろ❓≫ ≪腹くくったんじゃないの、ツグオ❓そん時はそん時よ。でしょ!≫ ≪わかったよ。何しろ、梯子から落ちた後、翌朝には二人とも、互いの髪の毛がパジャマに付いてたんだからな≫ ≪そうよ!こんなの、運命に決まってるでしょ!きっと、あなたと出会うために、神様かなんかが、おねーちゃんとあなたを先に出会わせたのよ。私たち二人の運命を盛り上げるために…≫ ≪そういうことになるか…。まあ、そうかもな~~(笑)≫ ー以上…、キリコが受験合格した翌日の二人のライン通話よりー 私の不時着 ー完ー 筆者拙著『沸湧き💖』収録作品より🎵
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