第2話/純心と屈折と

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その6 律也は3階の男子便所に飛びこんだ。 無論、”個室”へとなる。 ここは旧校舎で、大の個室はまだ和式だった。 神聖なはずの学校にいるのに、すでに律也性的欲求を抑えることができなかったのだ。 ”時間がない…。さっさと済ませないと。後処理も必要だし。パンツのしみ出しなんか見つかったら、いじめのターゲットになっちゃうからな…” 彼はしっかりコーフンしてはいたが、意外と冷静ではあった。 *** 一番奥の個室を選んだ律也は中に入ると、施錠を確認し、速攻でズボンを下げた。 そして目をつぶり、さっそく自慰行為にかかった。 当然、閉じた瞼を支配したのはユウトだ。 彼の白い歯をのぞかせた笑顔、勢いよく8段を飛んだ時、風にそよいだ柔らかそうな髪…。 何しろ彼は、匂ってくるようなキュッとした肉感を発していた。 そんなカレのハダカをもうすぐ拝める…。 その想像一本で、律也はモロ、カレにKOされた。 それは、オトコノコ同士にしか伝達しえないフェロモン…。 そう言えたのかもしれない…。 かくて、短い制限時間内での”果敢なトライ”は展開を見る。 それは誠にリアルかつ、陰陽を交差させた卑猥な数分間であった。 もう律也は心臓がバコンバコン波打って、すでに頭はクラクラしていた。 性に目覚めて間もない細身の少年は、12歳にして”オトコ”で果てたのであった…。 *** この間ジャスト2分…。 律也はその余韻に浸る間もなく、事後作業を強いられた。 しかしながら、その最中も、彼自身はまだ恍惚の中にどっぷりとであったのだ。 ”ヤバい。また、うずうずしてきた。早く戻らなきゃ…” 律也はそそくさとズボンを上げ、今自分が汚した箇所の掃除を済ませると健診会場へと急いだ。 なんともどんより模様のうしろめたさを抱えながら…。 それは、犯罪を犯したニンゲンがその証拠を抜き取る作業…。 年端の行かないローティーンの少年のココロを包み込んでいたのは、自己嫌悪と罪悪感に他ならなかったのか…。
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