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プロローグ
幼稚園に晴れて、入園することになった。
私は、胸の高鳴りが止まらず、前日から幼稚園の制服を着ることになる。
「ママ、制服買ってきてくれてありがとう」
無知で純粋な私は、これからどうなるのか考えずに母親に感謝をする。
「どういたしまして。
あなたも明日から、幼稚園生ね」
「うん」
私はこの時は幼稚園に行けば、友達がたくさんできるのだと勝手な想像をしていた。
だけど、これは今考えれば、なんの根拠もない妄想なはずだけど、大人の言う「幼稚園に行けば、友達がたくさんできるよ」という言葉を簡単に信じてしまっていた。
幼稚園の入園が終わり、私はしばらくしてからいじめられるようになった。
いじめっ子グルームのリーダーが、そこにいた。
そこからは、泥団子を投げられたり、わざと転ばされたり、「男子にぶりっ子している」という嘘の噂を広められたりもした。
幼稚園はお弁当なのだが、いじめっ子たち集団にけなされた。
「こんなもの食べているの?」
「食べ過ぎじゃない?」
「よく、痩せていられるねえ」
幼稚園の登園拒否をするものの、親に無理やり行かされる日々。
幼稚園の頃はずっといじめられることが続いたけれど、小学校からはいじめっ子グループたちとも、知り合いのいない学校に入学できるという話があり、私は安堵した。
だけど、そこが間違いだったのだ。
小学校に晴れて入学して、0からのスタートだと張り切っていたところに、いじめっ子グループは私の家にやってくるようになった。
そして、家を燃やしてしまった。
私は、こうして児童養護施設に引き取られることになったけれど、いじめっ子グループはやはりそこに来て、バッドを持ってきては、施設内を荒らして、施設の職員を何人か病院送りにした。
私はその後、精神病棟に入院することになった。
ここにいると、いじめっ子の顔を見なくていいという安心と、いじめっ子グループがこっちにもやってくるんじゃないかという不安が襲ってきた。
ここで、精神病棟にいる看護師からある提案を受けた。
「異世界の存在って、信じる?」
よく絵本で読んだことがある異世界だけど、そんなものが本当にあるのかどうかはわからない。
「その前に、どうしてそんな話を聞くの?」
「いじめっ子たちがその病院にも攻めてきているからよ。
もう、あなたに逃げ場はないの。
私から一つ言えることがあるとしたら、異世界という人間の力だけでは行けない場所に転移するの」
私は、迷うことがなかった。
「逃げる!
逃げれるなら、どこにでも行く。
だから、私を誰も知らない場所に連れてって」
「じゃあ、決まりね」
ここから、私の異世界逃亡生活が始まった。
私は、長い黒髪を赤いリボンで、トップテイルにした。
白のワンピースを着た幼女だけど、実はかなりの悲しい出来事を経験して、目は鋭くなっていて、性格は冷めたかのようになっていた。
まさか、いじめっ子がストーカーと化かすことなんて、誰が想像しただろうか?
異世界に来る前は、母親の方針によって、ずっと坊主頭だった。
髪を伸ばしてもらえなかったけれど、異世界にきてから、やっと女の子らしい髪型になれた。
身長も伸びてきた。
異世界での私のネームは、セリオ。
ちなみに、イタリア語で「真面目」という意味らしいけど、今の私の現状を言い表しているとも言える。
本名は別にあるけど、名乗りたくはない。
私は、いじめっ子から離れ、第二の人生を歩むことを決めたから。
ここに来て、もう4年。
私は、今年で11歳になる。
人間世界で生活していれば、今頃は小学5年生くらいになっていると思う。
私の髪は、すでに肩下まで伸びていた。
小学1年生の頃にやってきたけれど、やっぱりいじめっ子グループはどこまでも追いかけてくる。
そのことに、何の意味があるのかはわからない。
私は、精神病棟で看護師をやっている異世界案内人によって、異世界転移をして、一人で逃げ道を探すしかなかった。
探して見つけた先は、魔法だけで経営している謎のギルド。
ここで訓練したからというもの、私は槍を肌身離さず持ち歩くようになった。
いつ、どこで、あのいじめっ子グループに襲われてもいいように。
私は、大人が来る場所に足を運んでいた。
私も、これでも逃げなくてはならない身だけど、それがいつまで続くのだろうか?
だけど、捕まったらどうなるのかわからない。
わからないから、恐怖に怯えながらも、あいつたちがいない世界を目指していくしかない。
今日来たのは、酒場だけど、私はお酒なんて飲めない。
理由なんて、簡単だ。
まだ、成人を迎えていないから。
「お嬢ちゃん、一人か?」
酒場のオーナーっていう人に、声をかけられた。
「ええ。
一人よ。
見ての通りね」
「これは、よくないよ。
迷子かい?」
「親がいないの。
ちなみに、お酒はいらないわ。
飲むなら、ジュースでいい」
「お嬢ちゃん、年いくつだい?」
「今年で11歳になるけれど、まだ10歳」
「うちも、同い年くらいの子供がいるんだけど、よく酒場に来て、お酒とか飲める年齢でもないから、ジュースとか飲んでいたね」
オーナーは楽しそうに話していたけれど、私はあんまり興味がなかった。
「そっか。
私は自由に過ごせるなら、何だっていい」
私は冷たく答えてしまった。
「ところで、お嬢ちゃんはリンゴジュースとオレンジジュース、どちらがいいかい?」
「そうだなあ。
リンゴジュースかな」
オーナーは、ガラスのコップにリンゴジュースを注いでくれて、私に渡してくれた。
私は、そのまま飲む。
リンゴジュース。
生まれ故郷のリンゴジュースは、どんな味だったか今となっては記憶が曖昧になってきている。
「お嬢ちゃん、実はうちの子も母親がいなくてね、いつもわしのところに来ていたんだ」
「私は逆ね。
生まれた時から父親がいなくて、母親は私が7つになるかならないかぐらいで、この世を去った。
だから、父親っていうものがわからなくて、母から語る父親を探すことにした」
私の目的は、もうひとつある。
あの憎き殺人犯と化かした元いじめっ子グループから逃げ切ること以外にも、父親探しというのもあった。
母の話によると、私の妊娠がわかったころには、すでに別れていたらしい。
父親がいないことが普通だと思っていたけれど、幼稚園に入ってからはそれが変わっていることに気づくことになるけれど、父親の存在は私の戸籍にも認知されていないし、写真もない。
「探すってことは、父親は生きているってことかい?」
「さあね。
生きているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
母から語られた父親の記憶を元に探している感じだから、現在進行形ではないよね。
母は父と連絡を絶ってしまったみたいで」
「ということは、女手ひとつで育てたということか?」
「そういうこと。
オーナーが、男手ひとつで育てたようにね」
「一応、弟子の協力があったから、正式には一人でということではないかもね。
だけど、お嬢ちゃん、よく一人で頑張ってきたね。
孤児院とかは行かなかったの?」
孤児院とか児童養護施設は、異世界も含めてあるにゃある。
だけど、そんなことしたら、いつ追手がくるとかわからない。
「どんな形であっても、私は一人なの。
孤児院にいたとしても、私といるだけで不幸が舞い降りてくる。
だから、どこにも行き場がなくて、この酒場も、オーナーとの出会いも、これで最初で最後となる。
殺人鬼は、いつどこで襲ってくるのかわからないわ」
「よくわからないけどさ、お嬢ちゃんがどうしても一人で寂しいというのなら、吸血鬼一族の仲間になったり、パートナーを迎えたり、魔法学校に通うとか、人生なんていろいろな選択肢があるんだ。
これしかないって、諦めてないか?
一人では難しいことも、仲間といれば乗り越えられるかもしれない。
お嬢ちゃん、立ち上がってみようか?」
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