第2話 魔法学園にて

1/1
前へ
/7ページ
次へ

第2話 魔法学園にて

 魔法学園には、様々な年齢の種族が通う、魔法を習得すれための学校。  私と、バンピーロは、晴れて入学することになった。  入学試験とかはなく、願書だけ出せば、それだけで入れる。  人間世界の学校なら、義務教育とかじゃない限り、そんなことはなさそう。  だけど、外国ならあるかもしれない。  その中でも、人間はめずらしいのか、よく話しかけられる。 「もしかして、人間?」 「人間の匂いがする」 「人間がどうやって、ここにやってきたの?」 「魔力を感じないけど、魔法なんて使えるの? 落ちこぼれになりそう・・・」    私は、そんなことで動揺もしない。  だけど、問題はバンピーロだ。 「セリオちゃんは、これでも頑張っているんだ!」 「バンピーロ、いいのよ・・・。 こういうこと言われるのは、慣れっこだし・・・」 「セオリちゃんは、傷つくことがあるなら、遠慮なんてしなくていいから、もっと僕を頼るんだ。 でないと、本当にセリオちゃんが・・・・」  バンピーロが、悲しそうな表情をした。  もしかして、私のことを心配してくれている? 「ありがとう、バンピーロ。 でもね、この人たちは、私にひどいことをしようってわけではないと思うわ。 ただ、人間や魔力を持たない者が目の前にいることが、珍しいだけだから、バンピーロは必要以上に気にしすぎなのよ・・・・」  まわりにいる人たちからは、ひそひそ話が始まる。 「この二人、付き合ってる?」 「入学した当初から、こんな感じか」  だけど、私はこんなことぐらいでは、物おじたりしない。 「ただの腐れ縁よ」  私は、静かに答えた。 「腐れ縁かあ。 いいなあ。 こういった関係がほしいなあ」 「羨ましい?」 「羨ましい。 すっごく羨ましい。 セリオちゃん、すごくきれいだし」 「ありがとう」 「髪もつややかで、瞳も宝石みたいだ。 髪留めの赤いリボンも似合っている。 どこで、買ったんだ?」 「市場の商店街かしら? 10歳の誕生日に、買ってもらったの」 「髪のお手入れとか、どうしているの?」 「これは、そこらへんで売っているシャンプーとか使っているから、特に意識したことはないかも。 髪質はママからの遺伝かもしれないわね」  ここで、バンピーロの視線を感じた。  やばい、嫉妬しているかもしれない。 「ナンパか?」 「どう見ても、ナンパじゃないわよ」 「君の髪も瞳も僕だけのためのものなのに・・・」  バンピーロは、どこか悔しそうだった。 「大丈夫よ。 私は、誰かのものになったりとかしない」 「だといいんだけど」  バンピーロは、どこか納得していなさそうだった。 「婚約者って言ったでしょ? その話をしたことは、なかったことになったのかしら?」 「なってない!」  私はこの時、バンピーロは子供みたいで可愛いと思ってしまった。  なんやかんやで、私は幸せな学校生活を送っていた。  だけど、それも長くは続かなかった。  幼稚園時代のいじめっ子集団がせめてきた。 「ここに、佐藤はいるかー!」 「佐藤のやつ、逃げられると思うなよ!」  佐藤というのは、私の苗字だ。  数年ぶりで懐かしい感情があるのと、同時に恐怖もあった。  どこにいても、やってくる。  まさか、魔法学校にもやってくるとは思わなかったけれど、元いじめっ子軍団は何の魔力も持っていない。  だから、勝てっ子ない。  だけど、元いじめっ子軍団は次々に、人を殺していった。 「なんだ、こいつら?」 「人間の匂いがするけど、何者なんだ?」 「魔力は持っていないはずだ。 どんどん、魔法を使うんだ!」  元いじめっ子集団は銃や包丁を持っていて、それを使い、次々に銃殺や刺殺をしてくる。  魔法学校の生徒や先生たちの魔法で、少しずつ元いじめっ子集団を撃退している。 「佐藤は、どこにいるの?」 「佐藤は、どこかにいるはずだ。 探すんだ!」  私は槍をかまえた。  私が、当のいじめられっ子の佐藤だと気付いていないみたい。 「君のいう、佐藤って誰のこと?」 「は?」 「佐藤って、誰のことかって話よ」  私は、元いじめっ子のリーダーにそうささやいた。 「幼稚園の頃のひ弱な女のことだ! 坊主頭のな!」 「何のことかわからないけど、君のお目当ての相手はいないと思うわ。 早々に立ち去るのね」 「うちは、佐藤ってやつをいじめたいんだ! いじめることを生きがいとしている! 今だって、そう! いじめたいから、探しているんだ! ストーカーしているんだ! いじめをしていないと、禁断症状がでそうで・・・・」 「そんなことなら、重症ね」 「そうだよ! 重症だよ!」 「なら、昔の人がどこにいるかを探すよりは、お医者様を探した方がいいんじゃないかしら?」 「今すぐ、殺す!」  元いじめっ子リーダーが銃を向けたところに、バンピーロが私を救出してくれた。 「バンピーロ・・・・」 「セリオちゃんにひどいことをする人は、僕が許さない。 僕が相手だ」 「かかってきな!」 「バンピーロ、こんな相手に勝てる?」 「勝てる勝てないじゃない。 君を守るか、守らないかだ」  こうして、バンピーロが元いじめっ子に立ち向かった。 「一緒に逃げよう! バンピーロ! 私は、君に生きてほしいよ!」 「はん。 あたしは人間世界でも警察に追われ、家族からも見放され、異世界では指名手配犯の身だ! あたしの顔を見た以上は、簡単に逃げられるなんて思わない方がいい!」  私も、戦わないと・・・・!  誰にも言えないけど、私が原因で起こったことだから・・・!  だけど、恐怖のあまり、足が動かなかった。 「バンピーロ、お願い・・・。 帰ってきて・・・・」  バンピーロは、銃で何か所も撃たれて、怪我をしていた。  それでも、生きているのは、吸血鬼であるおかげだと思う。 「セオリちゃん、僕は絶対に助かるから、この場を離れてよ」  バンピーロは足を負傷して、今にも動けそうになかった。 「うちの言ったことを、お忘れで? 顔を知られた以上は、逃がさないって」 「逃げられないことなんて、承知の上だよ。 逃げられないなら、逃がしてくれないなら、戦うまでよ!」  私は槍を抱えて、元いじめっ子のリーダーに戦闘をしかけた。 「うちは、あんたらを、世界を、許さない!」 「全部、ぜーんぶ、自業自得よ! 話を聞いた限りね!」 「うちは、理屈屋なんて嫌い!」 「私は、いつまでも過去のことばかりにこだわって、自分のことよりも、いない人のことばかり気にして、仲間の命でさえも、罪悪感を持たない君が嫌いだよ!」  私は、負けずと言い返す。  二度と、あの時のように我慢したりしない。  私は、逃げることだけじゃない。  戦う手段もある。  私は銃での攻撃を槍で跳ね返し、ナイフも槍の刃先で折った。 「高かったナイフを、どうしてくれるの?」 「こっちこそ、大切な友達をどうしてくれるのよ?」  私は過去にやってきたこともそうだけど、大切な人を傷つけたことを許せそうになかった。 「くっそ、強いなあ。 お前ええええ!」 「当り前よ。 ただ、守られているだけの私じゃないもの」 「佐藤は、どこだああああああ!」 「佐藤、佐藤って言うけど、過去のいない人のことなんて、諦めるのね。 どんなに探しても、どんな世界にも、手がかり一切ない人のことなんて、見つけようがないわよ・・・。 そう、私のパパと同じようにね・・・」 「うるさい! うるさい! 佐藤が、佐藤をいじめることこそが、うちの生きがいなんだ! 佐藤のいない世界なんて、死んでるも同然だ!」 「なら、君は人としてとっくに死んでいるわね」 「お前に、何がわかるんだああ! 幼稚園の頃の快楽は、今でも忘れない! うちは、そのためのストーカーになって、友達も犠牲にしてきた! 佐藤は、ここにいるとうちの直感が語っているんだ!」 「その佐藤って人は、本当にここにいるの? いないんじゃない? 君の勘違いなだけで」  私と元いじめっ子リーダーは、今は槍と銃での戦いだ。  銃の玉が飛ぶたびに、槍で跳ね返し、元いじめっ子に全部当てていた。  血だらけになりながらも、銃を撃ち続けるその姿は、まるで人間とは思えなかった。  普通の人間なら、死んでいるはずだけど、なぜ生きていられるの?
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加