第5話 最強のパパ

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第5話 最強のパパ

 パパは、あの怪物となったアコーソと戦う。  素手で、互角にやり合う。  私は、アコーソの発言が信じられない。  目的のためなら、仲間すらも捨てられるような人なんだ。  彼女は、心すらも怪物になりきってしまったのかもしれない。  私は何かを犠牲にして戦うか、守るために戦うか。  正しい戦う目的がわからない・・・。  だけど、これだけはわかる。  わたしは、目の前にいるパパを失いたくないということだ。  もうこれ以上、誰も犠牲にしたくない・・・! 「セリオ、何を呆然としている?」  ペングウィーが、私の左肩に乗る。 「私も戦う・・・・」 「これ以上、無理な行動をすることはよくないと思うな。 君を失えば、いじめが終わるということはないはずだ。 どうせ、こういうタイプは新たなターゲットを見つけるだけだ」 「私が戦う目的を、考えてみたの」 「それは?」 「自分を犠牲にするためじゃなくて、自分も自分以外の誰かも含めて、犠牲を増やさないために戦うって」 「それは、復讐心から来ていたりしないか?」 「それもあるかもしれない。 それよりも、私は守りたいものができた。 たくさんの人を失ってきた。 ママも、児童養護施設の人々も、魔法学園のみんなも、恋人も、全てあいつに奪われた。 だけど、私はなぜ救えないのか考えてみたの。 私は、どこかで自分だけを大切にしている気持ちがあったから。 この気持ちに気づいたら、二度と同じことはしない。 だから、ペングウィー、一緒に戦おう・・・」  ペングウィーは、私の話を真剣に聞いてから、返事をした。 「・・・・いいだろう。 魔力を持たない君と、無数の魔力を保有しているぼおいらが戦えば、きっとあの怪物に勝てるだろう」  私は槍をかまえて、アコーソに襲いかかった。 「セリオ、危ない。 今からでも、間に合う。 挑発するようなことはやめるんだ」 「挑発でもいい。 アコーソはこれらかも、いろいろな人を犠牲にしてまで、佐藤ってやつを探すと思う。 いるか、どうかわからな存在をね・・・・」 「セリオ、わし一人でなんとかなる相手かもしれない・・・」 「ここで、おいらの出番ということだ」  ペングウィーが、口をはさんだ。 「どっちにしても、セリオも、酒場のオーナーも、体内に魔力を持っていない。 怪我でも、したらどうするの? 補助魔法は? 不利な状況を、有利にするためだけにおいらがいる。 だから、二人とも、おいらに身を任せるつもりで戦えばいい」 「パングウィー。 そういうことなら、わかった。 なら、二人とペンギンで、共闘しよう」  パパは手足を使った素手のみで戦い、私は槍を振り回し、パングウィーが私とパパの力を補助魔法dえ強化してくれた。  ついでに、ペングウィーは魔法で、アコーソの力を弱体化させた。 「力が抜けていく・・・・」  アコーソは、その場で倒れた。  ここで、とどめだ!と思った矢先、吸血鬼さんがどこからか現れた。 「吸血鬼さん!」 「おや、セリオじゃないか?」  吸血鬼さんは、私に会釈をした。 「倒すことを考えていませんでしたか・・・?」 「考えていたわ。 だけど、それが何か問題がある?」 「問題おおありですよ。 異世界転生をしたこのアコーソという怪物は、何度でも転生します。 最弱な魔物に生まれ変わればいいかもしれませんが、それがもち、今よりも強い魔王にでもなったら・・・・? 君たちの身が危ないどころか、世界が滅亡の危機にさらされます」    パパも、私も考え込んでしまった。  この怪物は、きっと生きていても悪さをすると思う。  それに、転生なんてされてもたまったもんじゃない。 「じゃあ、どうすればいいの?」 「さあ、どうしたらいいんでしょうかね。 牢屋にでも、ぶち込んで、終身刑にしますか?」  ここで、パパが答えた。 「そういう事情なら、それが一番だろう」 「了解です」 「吸血鬼さんは、どうしてここがわかったの?」 「わかったわけじゃないですが、魔法学園の生徒の大量虐殺の件が耳に届きまして、こうして犯人を探していたところに、偶然ですが、発見しただけです。 アコーソが、怪物に姿を変えたところも、目撃した人もいるくらいですからね、ここらへんでは有名なんですよ。 指名手配犯ぐらいのレベルになると、知らない人はいないというレベルになりますがね。 さ、おしゃべりはこの辺にして、これで失礼いたします」  吸血鬼さんは、こうして黒いマントにアコーソを包み込んで、空高く飛んで、去って行った。   私はその様子を見て、全身の力が一気に抜けていくのを感じ、その場に座りこんだ。 「終わった・・・・」 「セリオよ、まだ終わっておらん」 「まだあるの・・・?」 「わしには、まだ救わなくてはならない人が二人もいる」 「それは、もしかして・・・・」  大体、予想がつく。 「君は、四つ子で生まれた。 つまり、残りの不幸寄せと、死に寄せがある。 そして、セリオにお願いがあるんだ」  私は、パパの言うことを聞き逃さないようにと、必死に耳を傾けた。 「姉を助けてくれないか?」 「姉?」 「そうだ。 四つ子のうち、君が最後に生まれたということはすでに聞いただろう」   「ええ。 聞いてから、何時間も立っていないわ」 「そこで、だ。 四つ子のうち、三番目に生まれた姉。 その子を守ってほしいんだ。 彼女も人間世界の親戚に預けられたのだが、保育園の頃にいじめにあってな、いじめっ子から離れるたために幼稚園に入園したんだ。 だけど、そこで死に寄せというものが発動してしまってな、保育園時代のいじめっ子が幼稚園や家にもやってきて、大量殺人にあい、精神病棟に入院しても、そこでも、数々の殺人事件に巻き込まれてしまった。 保育園でのいじめっ子は、やはり幼い子供だからという理由で見過ごされてしまったと知った時は、人間世界は少年法も含めて、犯罪者を軽視しすぎていると感じたよ。 そんな彼女に残された選択肢は、ひとつだった。 幼い4歳になるかならないかぐらいの彼女の決断だ。 異世界に逃げることだ。 逃げるということは、死に寄せの呪いを持った者からしてみれば、根本的な解決にはならないのだが、それが当時の彼女が一生懸命に考えてだした答えなのだろうな。 セリオ、わしは他にも守りたいものがある。 その子だけに全力というのは、正直に言うと難しい。 セリオは、血がつながったとしても、見ず知らずの姉を助けたいと思わないか? 無理はしない。 これは、命をい犠牲にしてしまうかもしれないんだ。 セリオは、どうしたいんだ?」  私は、考えた。  血がつながっている姉だとしても、私は知らない。  見たこともないし、会ったこともない。  ママのお腹に宿っていた頃の記憶なんて、正直に言うと、ない。 「姉に会ってみるわ。 決めるのは、そこからよ」 「セリオ・・・・」 「それに、守るべき存在も、助けなきゃいけない者も、一人じゃないわ。 四つ子全員が、本来あるべき家族なら、その人も含める。 不幸寄せは、命に関わることじゃなくても、本人が苦しいなら、私は助けてあげたいわ。 そして、何も呪いを持ってなくても、悩みがあるかのしれない。 その人は、助けなくてもいいの? そんなことはないわ。 一人一人が、大切な存在のはずよ」 「セリオ、それならわかった。 まずは、その姉に会ってみよう。 そこから、考えてみよう」  こうして、私とパパ、ペングウィーはその場を去った。  酒場が壊れてしまったのだから、営業しようがない。  だから、ここを出るしかない。  ここが、パパしかいない酒場でよかった。  他の人がいたら、アコーソは間違いなく、巻き込んでいたと思う。
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