雨音と少年

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 柔らかな雨粒が大地に降り注ぎ、街は灰色の雲に包まれていた。人々は傘を手に持ち、駆け足で目的地に向かっている。その中で、一人の少年が雨粒を受け入れるように歩いていた。  彼は名前も知らない雨の美少女に出会うことを願っていた。その噂を聞いてから、彼の心は彼女への想いで一杯になっていた。しかし、その美少女は雨が降るときしか現れないというのだ。それでも、少年は毎日のように雨の日を待ち続けていた。  ある日、灰色の雨雲が街を覆い始めた。少年は心躍らせながら、傘を持たずに雨に打たれることを選んだ。彼は少しでも美少女に近づくために、雨の精のようになりたかったのだ。  雨が降りしきる中、少年は一人静かに歩きながら、美少女を思い描いていた。雨粒が彼の顔に触れるたび、彼はそれが美少女の指先であるかのように感じた。彼の想像力は限りなく広がり、彼女の姿が目に浮かび上がってきた。  すると、突然、彼の前方に透明な輪郭の美しい少女が立っているのを見つけた。彼女は雨粒の中に浮かび上がるようにして現れ、まるで水彩画の中から飛び出したような存在だった。  少年は息を呑んで彼女を見つめた。その少女は雨粒に包まれていて、光に照らされるたびに虹色に輝いていた。彼女の髪は透明な水のようになめらかに流れ、目は深い湖のように澄んでいた。  彼らは静かなまなざしでお互いを見つめながら、心の中で言葉を交わした。彼女は雨の精であり、彼女もまた少年のことを待ち望んでいたのだということが伝わってきた。  
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