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(だけど、お腹が空いていたのだから仕方がないわよね)
でも、そう思いなおして自分を正当化する。
「……俺も、食べるか」
彼が小さくそう呟いて、対面の椅子に腰かける。その姿を見て、芽惟はハッとして立ち上がる。
「お茶、入れますね」
「……どうも」
冷蔵庫の中には、ここに来るまでに購入したお茶がある。二リットルのペットボトルを出して、コップを出す。
「というか、あなたはお茶飲まなかったんですね」
敦也がフォークを出しつつ、そう言葉を投げかけてくる。
「まぁ、コンビニでお茶買って、その場で飲んじゃいましたから」
「へぇ」
興味深そうな声を上げて、敦也がパスタに口をつけていた。その近くに、コップに入れたお茶を置く。
「……というか、芽惟さん本当に食べるの早いですね」
彼がなんてことない風にそう言うのは、会話の方法を探っているからなのかもしれない。
心の中でそう思いつつ、芽惟は苦笑を浮かべた。食べるのが早いのは、昔からだ。
「まぁ、そうですね。食べている時間があるのならば、仕事をしようって思っていたので……」
企業のために、心身を削って働いてきた。
敦也が援助をしてくれたので、その必要はなくなった。けれど。
(あれは、無駄じゃなかったのよね)
きっと、芽惟があれだけ働かなかったら。企業は敦也が援助してくれるまで持たなかったかもしれない。そう、思う。
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