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その代わりに彼のお飾りの妻となっているが、それだってそこまで辛いことじゃない。もちろん、大好きな仕事が出来ないのは辛いと言える。だけど、だったら家事を頑張ればいいじゃないか。そんな風に、前向きに捉える。
「本当に、あなたは変わっている」
しばらくして、敦也がそう呟いたのがわかった。ハッとして顔を上げると、彼が唇の端を上げていた。
「仕事が好きだと言って、挙句こんなふざけた条件を呑んで、そのうえで感謝しているなんて言うんだから」
彼が頬杖をついて、芽惟を見つめた。……その美しい目に、吸い込まれてしまいそうになる。ごくりと息を呑めば、彼が口元を緩めたのがわかった。
「そんなあなただからこそ、俺はある意味、興味を引かれたのかもしれない」
「……え」
言葉の意味が、わからない。きょとんとしつつ、芽惟は小首をかしげる。興味、なんて……。
「あの雑誌編集者からあなたのことを聞いた」
「……麗美、から」
「そのとき、俺は強い興味を引かれた。だから、諸々交渉してあなたと会いたいと、言ったんだ」
芽惟の顔が少し引きつっているのが自分自身でもわかる。敦也を見つめていれば、彼が「くくっ」と喉を鳴らして笑った。その姿は、とても艶めかしい。男性に使う言葉なのかは、わからないが。
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