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しばらくして。
芽惟は食卓用のダイニングテーブルの上に、作った朝食を並べた。
とはいっても、大したものではない。まだ食材がそれほどない以上、それっぽいものを作ることが出来なかった。
きれいな白色の皿の上に載っているのは、スクランブルエッグ。それから、カットしたトマト。もう一つの皿には、トーストした食パンを一枚。
「明日からは、もう少しマシなものを作りますね」
「……はぁ」
芽惟の言葉に、敦也が曖昧に頷いた。
けど、それには気が付かないふりをして、芽惟はカップに入ったカフェオレを口に運ぶ。
……ちょっと冷めているけれど、やっぱり美味しい。
「……いただきます」
敦也が律儀にも頭を下げて、そう言ってくる。そのまま流れ作業でフォークを手に取って、スクランブルエッグを口に運んだ。
ケチャップの少しだけかかったそれは、芽惟が大好きな焼き加減だ。火を通し過ぎずに、色合いはきれいな黄色のまま。ふわっとした食感は、家族に割と好評だった。
「どう、でしょうか?」
きょとんと小首をかしげて、敦也にそう問いかけてみる。
彼は数回咀嚼して、呑み込む。少し緊張した表情を浮かべていれば、敦也はフォークを置いた。
「……そうですね。まぁ、美味しいほうかと」
「よかったです」
回りくどいが、結局美味しいということなのだろう。
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