第2章 同棲生活、始まります

20/26
前へ
/51ページ
次へ
 しばらくして。  芽惟は食卓用のダイニングテーブルの上に、作った朝食を並べた。  とはいっても、大したものではない。まだ食材がそれほどない以上、それっぽいものを作ることが出来なかった。  きれいな白色の皿の上に載っているのは、スクランブルエッグ。それから、カットしたトマト。もう一つの皿には、トーストした食パンを一枚。 「明日からは、もう少しマシなものを作りますね」 「……はぁ」  芽惟の言葉に、敦也が曖昧に頷いた。  けど、それには気が付かないふりをして、芽惟はカップに入ったカフェオレを口に運ぶ。  ……ちょっと冷めているけれど、やっぱり美味しい。 「……いただきます」  敦也が律儀にも頭を下げて、そう言ってくる。そのまま流れ作業でフォークを手に取って、スクランブルエッグを口に運んだ。  ケチャップの少しだけかかったそれは、芽惟が大好きな焼き加減だ。火を通し過ぎずに、色合いはきれいな黄色のまま。ふわっとした食感は、家族に割と好評だった。 「どう、でしょうか?」  きょとんと小首をかしげて、敦也にそう問いかけてみる。  彼は数回咀嚼して、呑み込む。少し緊張した表情を浮かべていれば、敦也はフォークを置いた。 「……そうですね。まぁ、美味しいほうかと」 「よかったです」  回りくどいが、結局美味しいということなのだろう。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1163人が本棚に入れています
本棚に追加